──────────────────────────────────── | 知恵市場 ☆ 2001.03.15 | g - e s s e n c e | エッセンス ☆ 合計発行部数 672部 | | ES1072 ☆ (B-mail=95:Nifty=577) | | ¥200 ☆ http://chieichiba.net/ | ──────────────────────────────────── g-essence 072 エネルギービジネス戦略 ──────────────────────────────────── ■3つの発電技術を整理する ■変動電力とベース電力 ■CO2排出は減らない ■ふたつの環境問題、どっちを優先する? c o n t e n t s ■じゃじゃ馬を飼い慣らして、文明を築いた ■自己完結するロジック ■自然エネルギーへのコンセンサスがあれば ■健闘する東京電力? ■未来を切り開く意志をもつ企業 ■未来を引き寄せるビジネス ──────────────────────────────────── text by paco/渡辺パコ ──────────────────────────────────── 今回は、2月23日に行った東京電力への取材をベースにしたエッセンスです。 21 世紀前半の30〜50年は、循環型社会が実現し、人類が持続可能になるかどうかを 決める重要な期間になるわけですが、その期間の変化がどうなるのか、その象徴 的な分野である電力供給事情について、今回の取材でいろいろと知り、考えるこ とができました。 電力業界は、循環型社会が実現できるかどうかを占うための3つの象徴が詰まって います。火力発電、原子力発電、風力発電です。この3つが今後どのように推移す るかが、持続可能性の主戦場のひとつであることは間違いないでしょう。人類が 人類自身の未来のために、人類自身と戦う戦場です。 その主戦場で、日本の電力会社という企業がどう戦おうとしているのか、そして それは僕らの未来にとって何を意味しているのかを考えていきます。 ──────────────────────────────────── ■3つの発電技術を整理する ──────────────────────────────────── まず先に、火力、原子力、風力、それぞれの特徴を確認しておきます。 火力発電と原子力発電は、それぞれ、熱を発生させる装置と、その熱でつくった 水蒸気でタービンを回し、発電する装置からできています。 火力発電で、熱を発生させるための燃料になるのが、石炭、石油、LPG、天然ガス などの燃料で、いずれも地下資源。資源の総量は有限で、燃やせばCO2と、なにが しかの有害物質が出ます。 原子力発電は、地下資源であるウランを「燃焼」*させ、熱を発生させて、発電し ます。ウランは有限ですが、埋蔵量などから利用可能年数は長く、資源枯渇のリ スクは小さい。「燃やして」も、CO2は出しませんが、放射線の危険があります。 風力発電は、太陽エネルギーを受けた大気の対流である、風を利用するため、資 源枯渇のリスクはなく、CO2も有害物質も出しませんが、資源が広く分散している ため、エネルギーを集約的に取り出せないところが問題です。 と、ここまでは読者の方もほぼ知っていることですね。 g-essenceでも繰り返し主張していることですが、風力発電が電力の主力になれば、 環境問題解決に大きく貢献することは間違いありません。しかし、その道のりは そうたやすくない。そのことを、順に見ていきます。 【*註】原子力発電での「燃焼」は、酸化反応ではなく、核分裂です。念のため。 核分裂がなぜ石油などの燃焼より圧倒的に大きなエネルギーを取り出せるのかと いうと、核分裂によって「質量」が失われ、その質量がエネルギーに代わるから です。通常の燃焼では、石油や木が燃えても、結果として灰が残り、CO2などが排 出され、燃焼前と燃焼後の質量は変化がありません。 ──────────────────────────────────── ■変動電力とベース電力 ──────────────────────────────────── 電力の問題を考えるときに、どうしても避けて通れないのが、変動電力とベース 電力の関係です。電力は現在の技術ではためておくことができないため、需要に 合わせて発電量を変化させなければなりません。一般には夜間に需要が下がり、 昼間あがる。冬は下がり、夏あがるという動きを示します。しかし、下がっても ゼロになることはありません。つまり常時発電しておく必要がある電力と、真夏 の昼間のようなピーク時の発電に備える電力とがあり、特性が違うということを 理解しておく必要があります。 /\ ←ピーク電力 / \ / \ (電力消費) \ / \ \/ ----------------------- ←ベース電力 ────────────── (時刻) 0 3 6 9 12 15 18 21 このうち、ベース電力をまかなうための主力となっているのが、原子力、その上 側の変動部分を担っているのが火力と水力です。原子力は大出力ですが、出力の 調節が難しいため、常時一定の出力で運転することに向いているのです。 さて、火力、原子力、風力という3つの電源を考え時、一般的な理解からいくと、 火力は残し、原子力を減らして、風力をのばす、というシナリオを考えがちです。 火力 原子力 風力 今後の推進 → ↓ ↑ これと、上記のグラフとを合わせて考えると、ベース電力を担っている原子力を 風力で置き換え、火力で変動を吸収する、というモデルが想定できます。一見こ れでうまくいくように見えますが、本当でしょうか? ──────────────────────────────────── ■CO2排出は減らない ──────────────────────────────────── 仮に、地球の風力資源を十分使うことができて、ベース電力を風力でまかなえた としても、実は環境問題には貢献できない点に注目する必要があります。 電力についての環境問題は、CO2排出による温暖化と、有害な汚染物質の排出のふ たつを考えなければなりませんが、こと温暖化防止という観点から見ると、CO2を 排出しない原子力を風力で置き換えても、温暖化は改善されないのです。 では、風力で火力を置き換えるという考え方はあるかというと、ロジカルにはあ りえます。風力発電は単体では不安定ですが、広い面積にわたって大量の風車を 用意すると、全体では変動幅が押さえられるという特性があります。この特性だ けを見ると、ベース電力に向いているようにも見えますが、風車の場合、風車と 発電機の間にクラッチをつけ、風があっても発電がいらないときは、「から回り」 させておくことで、発電量を減らすことができます。原子力をベース電力確保に 使い、風力で変動をカバーするというのは、十分な風力発電設備があれば、原理 的には可能なのです。 しかし、実際には欧州を始めこのようなシナリオを描くところはありません。論 調としては、風力の敵は原子力、原発を減らして、自然エネルギーを、という流 れになっています。 ここにある「ねじれ」が、電力の持続可能性を考えるときのひとつの「わかりに くさ」になっています。 東京電力を始め、電力会社は、安定供給という社会の要請に応えるため、原子力 プラス火力という選択肢をとるといい、環境保護派は原子力を減らして風力を、 と主張する(僕自身以前のエッセンスでこういった論を張りました)。しかし今 回の取材で、両者の主張が主張が、実はかみ合っていない(ねじれている)こと がわかった。これは大きな収穫でした。 ──────────────────────────────────── ■ふたつの環境問題、どっちを優先する? ──────────────────────────────────── ねじれの原因は、環境問題のふたつの側面のうち、どちらを優先するか、という 点から見ると、よりクリアになってきます。 ひとつはCO2排出による温暖化。もうひとつは、有害物質による人体と自然への影 響です。 火力と原子力と風力、それぞれの有害廃棄物について見てみます。 電力会社(あえて東京電力ではなく、電力会社一般としますが)の理解によると、 原発は放射能という有害影響を「実質的に出していない」ということになります。 実際、原発から出る放射能は自然界の放射線と比べてもごくわずかで、廃棄物の 管理も行き届いています(あえて言い切っておきます)。 見逃されがちなことですが、火力発電でも、石炭、石油、LNGの燃焼のあと、廃棄 物が出ます。窒素酸化物、硫化物などがガスとして、また、燃焼後の灰もある。 ガスはフィルターなどである程度回収され、灰も産業廃棄物として処理されてい るにしても、自然界に捨てられることには変わりはなく、毒性がない物質でもあ りません。またいずれも一般的な産業廃棄物扱いのため、処理施設(埋め立てな ど)に送られてからの管理は、かなり甘いといわざるを得ないでしょう。 それに比べると、放射性廃棄物は、社会の目の厳しさのなかで、厳格な管理をし ています。毒性・危険性が高いだけに、管理の水準も高い。 そしてもうひとつ、東京電力が強調していた重要な特徴が、毒性のものの絶対量 の少なさ、でした。 燃料も廃棄物も毒性があるし危険度も高い。しかしその絶対量がわずかであるた めに、管理に万全を期すことが「可能」だというわけです。実際、廃棄物の量は、 日本にある全原発から出る量で、1日あたり38トン。いっぽうで日本では産業廃棄 物が 1日 110万トン出ています(単位に注意)。その産業廃棄物のなかに含まれ る有害物質の総量はかなり多くなるはずなのに、緩やかに(いい加減に)管理さ れている。それに比べて 1日 38トンの原発からの放射性廃棄物は、同じように危 険であっても、厳格に管理されている。仮にJOC事故のような放射能汚染事故の可 能性があったとしても、「どっちが社会として低リスクか?」と電力会社は投げ かけているわけです。 いっぽう、風力発電でも廃棄物は出ます。ひとつは発電設備の製造段階、もうひ とつは老朽化した発電設備の廃棄です。しかしこちらは、火力、原子力と比べる と、悪影響はごくわずかで、ほぼないと理解しいいでしょう。 CO2の排出がないこと、有害廃棄物がほぼ無視できることを考えると、風力発電が 有望であることは、事実ですが、ここではこの点は少しおいて、火力と原子力に ついてもう少し考えてみます。 ──────────────────────────────────── ■じゃじゃ馬を飼い慣らして、文明を築いた ──────────────────────────────────── 人間の歴史は、自然のもつポテンシャルを、技術で飼い慣らしてきた歴史です。 今我々は原発を怖がっていますが、自動車のエンジンを怖がる人はいません。ガ ソリンは、街中で売られていますが、ガソリンをバケツに入れてしばらく放置し、 石と石がぶつかるようなちょっとした火花を起こせば、かんたんに爆発し、周囲 の人間を殺してしまう力があることを、忘れて生活しています。 そんな危険なものを、何十リットルも入れた乗り物に乗り、それを自分のうちの 屋根の下に保管している人が大量に暮らしている。しかもその乗り物が走る回る ことによって、日本だけで年間10000人の人が死に、その数倍の人がケガをしてひ どい目にあり、さらにその数十倍の人が健康被害に苦しんでいる。そのことのほ うがよほど感覚が麻痺しているのではないか? まして航空機はどうか? ガソリン以上に火力の強い航空燃料を大量に積み、一 度事故があれば数100人の命が失われ、しかもそれは決して小さい可能性ではない。 電力会社の主張によれば、原発を怖がる人がなぜ自動車を怖がらないのか、理解 できない、ということになりかもしれません(東京電力の人がそのように表現し たわけではありません、念のため)。 自動車や航空機に比べて、原発を危険視する理由はどこにあるのか? JCOの事故 を含めて、原発のリスクで死んだ人は、日本の30年に及ぶ原発の歴史のなかでわ ずか。では自動車は? 航空機は? ──────────────────────────────────── ■自己完結するロジック ──────────────────────────────────── このように見てくると、電力会社のロジックは、完結した説得力を持っているこ とがわかります。 原発はリスキーな面はあるけれど、それはほかの「科学技術」と比べて必ずしも 大きくはなく、環境問題解決への貢献度は大きい。地下資源を使うといっても枯 渇の心配は今のところ少なく、プルサーマルなど、利用技術を向上させればさら にその年数をのばすことができる。 し・か・も、低コスト。 たしかに原発は建設に初期コストがかかる(3000億円台)。しかしもし同等の発 電能力をもつ風力発電設備をつくるとすると、1兆円以上かかる。原発は燃料代や 管理コストがかかっても、そのコストは安く、放射性廃棄物の処理や廃炉の処理 のコストを入れても、十分安い。 老朽化した原発の解体については、日本では数十年コンクリートで固めて、とい う案が出ていますが、ドイツでは実際に、1年で解体してしまった例があり、高レ ベルの放射能に汚染されたもの以外は、水洗いして、一般廃棄物としての積みさ れているそうです。日本の方法のように注意深く解体しても、どんなにかかって も建設コストより安い。つまり、建設、運転、廃炉までのコストは、十分に安い というわけです。 では、使用済み核燃料や高濃度汚染の廃棄物処理はどうでしょうか? 使用済み 燃料のリサイクルや、最終処分についての方法が検討されていますが、長期にわ たる管理が必要だったとしても、十分低コストだと主張します。実際、今年から、 電力会社は原発や放射性廃棄物の処理コストを電力料金に上乗せし始めますが、 その値段は1世帯あたり数円レベルで十分まかなえる。 これら、全体的な低コストのその最大の理由は、原子力が非常にエネルギー密度 が高いからです。量子物理学の法則に従って、質量をエネルギーに変える原子力 発電は、ごくわずかな質量で莫大なエネルギーが取り出せる。その結果、燃料も、 その後の管理も、それがいくら慎重な管理が必要であっても、絶対量が少なけれ ば、コストも相対的にわずかですむ、というのです。 さすがに理論武装は完璧で、スキがまったくありません。 ──────────────────────────────────── ■自然エネルギーへのコンセンサスがあれば ──────────────────────────────────── 「総合的に見て、原発のメリットはこれだけあるのに、にもかかわらず風力発電 にもっと力を入れろというなら、それについて、社会的なコンセンサスがほしい」 これが電力会社の本音でした。風力エネルギーの可能性や良さはよくわかる。で もコストがかかり、社会的なコンセンサスがとれていない。にもかかわらず、軸 足を原子力から風力へ移すほど、価値のあるものなのか? またそれで公益企業 としての社会的な責任が果たせるのか? 風力発電への移行に消極的な理由は、 次ぎの3つに集約されてきます。 ◎コスト まず、風力発電は原発より金がかかる。いくら風力が安くなったといっても、 まだ原発や火力に比べると高い。にもかかわらず、原発は作らず、火力も作 らないで風力に力を入れた方がいいというなら、コストをだれが負担するの か、社会的に決めてほしい。 ◎建設手順 また風力は、広範囲に作る必要があり、多くの地権者や周囲の住民に了解を 得る必要がある。こういった了解のための手順は、原発や火力発電所と比べ てまったく整備されておらず、ゼロから開拓する必要がある。 ◎技術的な保障 さらに、安定供給やピーク電力への対応などが本当に可能なのか、技術的な 実現可能性についてもまだ未知数。 電力会社としてのこういった主張は、一企業としては十分にわかります。そして 僕らの社会はまだそこまでのコンセンサスはなく、いっぽうで原発には「慣れは じめて」いる。 実際のところ、あちこちに風車が回る風景と、日本のごくわずかなところにひっ そりとコンクリート詰めの原発があるのと、どっちを日本人は望むのか? 企業としてみたときに、こういう社会状況のなかで、かつ既存の「原発プラス火 力」モデルに理論的な破綻もないなかでは、風力発電に積極的に取り組む理由は ほとんどないのも、ビジネスをやる人間として、よく理解できるし、またその点 を責めるのは酷だというべきでしょう。 ──────────────────────────────────── ■健闘する東京電力? ──────────────────────────────────── し・か・も。 こういったなかで日本の電力各社は昨年秋から「グリーン電力基金」を導入し、 風力など自然エネルギーの開発に取り組み始めました。 これは[ecru]MLでも紹介しているので、手短に説明しますが、東京電力はじめ、 国内電力会社が、市民から寄付金として月額一口500円を集める。東京電力では、 この寄付金に加えて、寄付金と同額を東京電力自身が寄付し、まとめてGIAC(財 団法人広域関東圏産業活性化センター)に送金し、GIACが自然エネルギーへの助 成先を決め、助成を行う。今年は「事業として行う」風力発電にたいして、1キロ ワットアワーにつき1円の補助を行って、コスト競争力を後押しするというのが助 成の方針として決まるようです。 またこれとはべつに、「日本自然エネルギー株式会社」を設立し、排出権取引に あたるような自然エネルギーの利用促進を図ることにも取り組もうとしています。 ちなみにこの会社は、東京電力はじめ電力各社、商社などが出資。 ふたつの取り組みで、自然エネルギーにもちゃんと取り組んでいるし、本当にい いものなら採用します、という姿勢はちゃんと持っている。 と、ここまで見てくると、まったく破綻がないのが、気味が悪いほどです。 ──────────────────────────────────── ■未来を切り開く意志をもつ企業 ──────────────────────────────────── では、東京電力をはじめとする日本の電力会社、国の電力行政は、これでいいの でしょうか? そうねえ、そこまで考えているのなら、いいんじゃないの? と説得されてしま いそうになるのですが、そうはいきません(^_^メ) 自動車業界では、社会的なコンセンサスやコストメリットがないにもかかわらず、 脱石油に向けた研究開発が正念場を迎えています。欧州では、紆余曲折はあるも のの、脱原発に向けて動き出し、風力発電量も飛躍的にのばしています。 東京電力は、グリーン電力基金などの政策を行っても、今年の風力発電の買い取 り予想が1万キロワット。1年間の予想発電総量でいうと、9000万キロワットアワ ーになります(1万キロワット×24時間×365日)。東京電力の年間総発電量は 2700億キロワットアワーなので、0.03%にすぎません。 そのいっぽうで、1万キロワットの発電設備は、大型の風車10〜20基に相当します。 グリーン電力基金によって、最初の1年で、人工や産業の密度の高い関東圏(1都 6県プラス山梨、富士川以東の静岡県)にこれだけの風車ができれば、「けっこう いいんじゃないの?」という見方が東京電力の視線です。 あなたはこの数字、どう見ますか? 僕が問題にしたいのは、企業としての「未来を切り開く意志」です。「けっこう いい」じゃなく、「いまのユーザーへの責任」ではなく、「未来の世代」にまで 視野を広げ、「本当になすべきことを最大限実行する」という意志を持っている かどうか。 燃料電池自動車に取り組むトヨタやGM、そして水素エネルギーに取り組むロイヤ ルダッチシェル。彼らは、100年の歴史の転換点にたっていることを自覚していま す。ロイヤルダッチシェルの幹部は、NHKの地球白書の取材のなかでこう述べてい ます。 「我々は100年前には石炭や薪を売っていましたが、20世紀に石油を扱う会社に生 まれ変わりました。21世紀には別のエネルギーを扱っているでしょう。それは歴 史の必然です」 東京電力の取材からは、こういう言葉はついに聞かれませんでした。現在から向 こう10年ぐらいはいけそう、うまくすれば30年ぐらいはだいじょうぶ。でもその 先は、「どうなるんでしょうね〜」というニュアンスが常に漂っています。 ──────────────────────────────────── ■未来を引き寄せるビジネス ──────────────────────────────────── ビジネスという人間の営みは、どのぐらいの時間的なスパンを考慮すべきなので しょうか。 以前にも初回したネイティブインディアンの思考法によれば、人間は7世代あとの ことを考えて今物事を決めるべきだという。7世代は、100年ぐらいを意味してい るのでしょう。 ビジネスは、米国流の株主重視の経営では1年、いや四半期ごとかもしれません。 中長期計画では3年から5年、長くて10年。電力会社のようなインフラビジネスで は、現在主力の資源の枯渇年数などを見る必要があり、30年ほどかもしれません。 実際、東京電力の視線は、石油の枯渇年数の40年と、天然ガス、ウラン資源の枯 渇年数である60〜70年先に向けられています。 しかし、そこには発展途上国の、今後の成長によるエネルギー需要の大幅な増加 や、温暖化による急激なエネルギー需要の変化については考慮されていません。 まして途上国のエネルギー需要にたいして、技術と資金を持つ先進国の企業とし て何をするべきかという視線もありません。 需給のグラフを今のまま延長するなら、たしかに電力会社のいうように、20〜30 年程度は現状の延長で進むことができ、何も今風力を急激に伸ばす必要はない、 ということになるでしょう。しかし、途上国の動向や、温暖化の予想以上の深刻 化など、予期せぬ危機(スーパークライシス)も含めて、環境問題を根本的に解 決しなければならない、という意気込みは感じられませんでした。 では自動車産業はそこを考慮しているのか。YesでもありNoでもあると思います。 Noのほうから。自動車産業は、CO2排出の面でも有害物質排出の面でも、電力会社 以上に社会に悪影響を与えています。実際日本の電力業界は、この面では世界の 優等生です。問題児であるという自覚が強く、実際、カリフォルニアの規制など 具体的な「問題児バッシング」が目の前に見えている自動車業界にとって、燃料 電池車の開発など、環境対応は、「ごく近い未来の生き残りのため」の戦略であ り、「7世代あとを考えて」という行動ではないというべきです。つまり自動車業 界の行動は、それほど立派なものではない。 しかし、実際に彼らがとる行動の結果は、50年先の未来を10年先に変えるほど、 未来を引き寄せる力があるでしょう。つまり目先の経営課題に対応しているうち に、遠い未来にたいする課題も解決する(かもしれない)自動車業界と、目先に 課題意識が弱い分、将来の課題も解決しようとしない電力業界の違い、と構図を 描くことができるのです。 ● ● ● ここで、いつもなら、「では我々は何をするべきか?」という問題を考えていく ところなんですが、今回はあえて、ここでやめておくことにします。 僕らは環境問題という突きつけられた課題に、どのような思考回路で取り組んだ らいいのか。電力を軸に、あなたの考えを、[ecru]MLで聞かせてください。ここ に書ききれなかった、エネルギーについての資料もたくさんもらってきているの で、疑問にも(ある程度)答えられると思います。 2001.3.15 paco/渡辺パコ paco@suizockanbunko.com ------------------------------------------------------------------------ ■参考文献(いずれも東京電力発行のパンフレット) 数表で見る東京電力 平成12年度版 原子力Q&A 21世紀のエネルギーを考える TEPCOレポート VOL.93「使ったあとの原子燃料はどうするの?」 TEPCOレポート VOL.94「プルサーマル計画の実施に向けて」 ──────────────────────────────────── ●エッセンスの転載については、知恵市場までお問い合わせください。 paco@suizockanbunko.com 知人(個人)へのエッセンスの紹介を目的としての転載は、1号限り、全文を 送っていただく場合に限り、特にこちらに許可を取らずに行ってかまいませ ん。ただし登録せずに受け取った人がさらに別の人に送ることは認めません。 ──────────────────────────────────── end of Chieichiba Essence (c)Chieichiba & Suizockanbunko inc. 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