ワハハ・中国医学の世界へようこそ!


 こんにちは。中医学ライターの xizi こと 高島系子です。

 「中医学」は、日常生活に活かせる知恵の宝庫。妊娠・出産、育児の強い味方でもあり
 ます。10年以上にわたる取材で得た知恵の数々、ひとりじめはもったいない〜!という
 ことで、みなさまにも中医学の知恵をおすそ分け!です。

 ◆xiziの楽しい中医学 −その1 中医学は難しくない!

 ◆xiziの楽しい中医学 −その2 女性の体のフシギ part1

 ◆xiziの楽しい中医学 −その2 女性の体のフシギ part2

 ◆xiziの楽しい中医学 −その3 「気が抜けると風邪をひく」のはなぜ? 

 ◆xiziの楽しい中医学 −その4 風邪をこじらせないコツ〜私の「衛気不足」体験談〜

 ◆妊婦は、本当に太っちゃいけないの?

 

◎【ワハハ・中国医学の世界へようこそ!】
 ◆xiziの楽しい中医学 −その1 中医学は難しくない!

■妊娠すると、脈が変わる?
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私が中医学に出会ったのは、今から10年ほど前のこと。ライターとして独立し、
街ネタやインタビュー記事をはりきって書いていたころでした。
「薬剤師向けの中医学雑誌の仕事を手伝って欲しい」と言われたときには、まあ、
なんて地味な仕事!と思ったのですが、その編集者の、「女の人は妊娠すると脈
が変わるんだよ。そういうことも分かっちゃう中医学の診断法っておもしろいで
しょ?」という話に惹かれて、仕事を受けることに。その後、あっという間に中
医学の魅力にとりつかれてしまったのでした。
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■体の「なぜ?」が「なるほど!」に
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ところで、中医学ってどんなものだと思いますか?

「中国の伝統医学で、病気の治療には漢方薬を使う」
これも、間違いではありません。

でも、中医学のいちばんの特徴は、治療に漢方薬を使うことではなく、そのおお
もとにある理論です。その理論の中には、病気を予防するための知恵、病気とは
いえないくらい小さな不調の対処法、生理中や産後の養生法など、ふだんの生活
に役立つ知恵がたっぷりとふくまれています。

私がそのことを知ったのは、最初の取材のときでした。テーマは「脾胃気虚(ひ
いききょ)」。この四文字だけをみると、それだけで引いてしまう人がいるかも
しれません。じつは、私もそうでした。ところが、いざフタを開いてみると、ち
――っとも難しい話ではなかったのです。

「脾胃気虚」というのは、簡単に言うと、「胃腸が弱くて、何となくだるくて疲
れやすい状態」のこと(思い当たる人、いませんか?)。

なぜ、だるくて疲れやすいかというと、それはエネルギーを生みだす消化器(脾
胃)が弱っているから。いくら元気が出そうなものを食べても、それを消化・吸
収してエネルギー(気)に変える力が衰えていれば、必要な栄養がとれないのと
同じことになるし、逆に消化・吸収できなかったものが、体の中で老廃物となっ
て滞ってしまうため、体が重く感じるようになる、といった内容でした。

そして、こういった原因からくる体のだるさは、「気」を補いながら、消化器の
機能を高める食生活術や漢方薬で改善されるということを、このとき初めて知り
ました。

とりいれる栄養のことは考えても、消化器の受け入れ態勢までは考えていなかっ
た私にとって、まさに目からウロコの話でした。

中医学の基本を知ると、「疲れているときは、栄養のあるものを食べるより、ま
ずは胃腸をゆっくり休ませたほうがいい」とか、「貧血ぎみの人が、鉄分豊富な
ものをたくさんとっても、それを吸収できなかったら意味がない。胃腸の働きを
しっかりさせることが先決」など、自分や家族の体に合わせてアレンジすること
もできます。

このように、その後の生活に大いに役立たせることができたのは、単に「○○は
体にいい」という話ではなく、体の「なぜ?」を「なるほど!」に変える理屈が
そこにあったからだと思います。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■妊娠脈、あらわる!
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中医学って、なんておもしろいんだろう!こんなに身近で分かりやすいのに、用
語が難しいというだけで敬遠されちゃうなんて、もったいなさすぎる!
そんな気持ちと、「もっともっと知りたい」という好奇心に突き動かされて、そ
の後何年も取材を続け、雑誌や単行本を通して中医学の記事を書いてきました。
そして……。

  『女性の体は7の倍数で変化する』
  『出産は、体の大掃除』
  『中医学には、妊娠中のトラブルに関するさまざまな解決法がある』

こんなことを知るうちに、ぜひ自分の体で妊娠・出産というものを体験してみた
くなってきたのです。
念願かなって妊娠したとき、私はまず、ず――っと確かめたいと思っていたこと
を、真っ先にやりました。そう、脈のチェックです。

中医学には、「脈診」という重要な診察法があります。詳しい説明は省きますが、
いわゆる「妊娠脈」というものがあって、「玉が転がるような脈」が表れるとい
われています。中医学では、これを「滑脈(かつみゃく)」と呼びます。

脈診は熟練が必要な診察法であり、素人の私に分かるわけではないのですが、妊
娠前から自分の脈だけはよくみていたので、その変化に気づきました。
妊娠5週というごく初期で、なんとなく熱っぽくて、眠くて、力が入らないのに、
脈だけはいつもよりずっと力強いのです。まるで、赤ちゃんのエネルギーが宿っ
たような脈だ!と思いました。

後日、親しくしている中医師に、妊娠の報告がてら脈をみてもらったところ、
「はっきり滑脈が出ている」とのこと。「右の脈のほうが力強い。男かな?」
(左が強いと女の子なのだそうです)とも言われました。別の日に他の中医師に
もみてもらったのですが、やはり「右が強い」とのこと。「熟練した中医師なら、
脈診で男女の区別もつく」という話は知ってはいましたが、産まれるまでは半信
半疑。結果は……みごと当たりっ!でした。

このほか、子どもが逆子だった時に鍼灸で治った、といったことも経験し、私に
とって中医学はますます身近な存在となったのでした。


                                                    Text by xizi  
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◎【ワハハ・中国医学の世界へようこそ!】
 ◆xiziの楽しい中医学 −その2 女性の体のフシギ part1

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■女性の体は7年ごとに変化する
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考えてみると、女性の体はとってもフシギだと思いませんか?ある年齢になると、
自然に生理が始まり、妊娠できる体になっていくのですから。そして、どんな人
にもやがて「閉経」が訪れます。

「女性の体は7の倍数で変化する」。これは2000年以上前に書かれた、中国最古
の医学書『黄帝内経(こうていだいけい)』に書かれている言葉です。この法則
に従うと、「14歳で初潮、7×7=49歳で閉経」ということになります。現代と若
干のズレはありますが、2000年にして1〜2歳の差。時代は変わっても、女性の体
はそれほど進化していないのかもしれません。

女性の体は7×4の28歳までがピーク。7×5=35歳は、肌や髪にはっきりと加齢に
よる変化が見えてくる年齢。7×6=42歳以降は、白髪がかなり目立ちはじめ、生
殖機能にも衰えが……とくると、自然の摂理というものは、太古の昔からほとん
ど変わっていないんだなあ、としみじみしてしまいます。

「7の倍数」という発想そのものもユニークですが、それ以上にすごい!と思っ
たのは、女性の体に起こることが、ひとすじの流れのように連綿として「つなが
っている」ことをなにげなく示しているところ。初潮も妊娠・出産も更年期も全
部、それぞれが1本の線のように「つながっている」のに、それをあまりにも意
識せずに過ごしているなあと、ひとり反省したりもしました。

例えば、
10〜20代のころは平気で体を冷やすような格好をしていたこと。
生理に関して無頓着だったこと。
若いころにむちゃをしても、それが更年期まで響くとは考えもしなかったこと。

などなど、思い当たることはいろいろありましたが、とりあえずは「生理」を見
直してみよう、とそのときに思いました。
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■生理中の正しい過ごし方
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中医学では、生理には体を「掃除」する役目があると考えられていて、このとき
に出すものを出しておかないと、月経痛や血行不良の原因になると言われていま
す。トラブルを避けるためには、まずは体を冷やさないようにすることがたいせ
つです。また、月経血とともに「気」というエネルギーも外に出ていく時期なの
で、よい気と血を外から補うことも必要です。

つまり、冷えや過労は避け、上手にエネルギー補給をするのが、「生理中の正し
い過ごし方」ということになります。

・生理中は、おなかと腰、足は冷やさない。
・ナツメ、枸杞の実、黒砂糖、黒ゴマなど、「気」と「血」を補う食べものを積
  極的にとる。
・冷たいものや生もの(生野菜、刺身、果物など)はできるだけ避ける。
・夜更かしはやめる。睡眠時間もふだんより多くとる。

これが、中医師(中医学のお医者さん)に教わった「生理中の養生法」です。ち
なみに、これらのオキテは、中国の女性なら誰でも知っている「あたりまえのこ
と」なのだそうで、その中医師からは「日本の女性は、なぜ知らないの?」と逆
にびっくりされてしまいました。
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■基礎体温表で、体質傾向が分かる?
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生理中の生活を変えると、いろいろおもしろいことが分かってきました。そして、
あまり見る機会のなかった月経血をじっくり観察するようになりました。生理の
周期にも敏感になりました。もっと体の中で起こっている出来事を知りたくなっ
て、基礎体温表もつけるようになりました。

基礎体温というと、中医学とどういう関係があるの?と思われるかもしれません。
でも、現代中医学では基礎体温の研究も進んでいて、西洋医学とはまた違った解
釈があり、それはそれはおもしろいのです。

例えば、一般的には低温期と高温期が二相性になっていて、高温期が14日あれば
正常、ということで片づけられがちですが、中医学では「全体的に体温が低い」
「高温期が不安定」「低温期から高温期の上がり方が鈍い」「低温期が高く、高
温期との差が少ない」といった特徴を、体質的な問題点や体の状態を判断する材
料にするのです。

そして、生理中だけではなく、「低温期」「高温期」に合わせた養生法というも
のも存在します。確かに、生理が終わったあとと始まる前では体調も体の状態も
違うのですから、生活のしかたも違って当然なのかもしれません。

とはいえ、ふだんの生活でそこまでのことはできない!というのが正直なところ。
とりあえず、もっともたいせつな生理の期間だけ、生活にちょっとだけ気を配る
ことにしました。たったそれだけのことなのですが、数年経って気づいたのは、
「体温が確実に上がっている」ということ。36度を切ることもあった低温期が、
いつの間にか平均36,5度くらいになっていたのです。

目に見える結果は特に求めていなかっただけに、その変化には自分でもびっくり!
でした。それからさらに数年後、私は妊娠したのでありました。

                                                    Text by xizi  
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◎【ワハハ・中国医学の世界へようこそ!】
 ◆xiziの楽しい中医学 −その2 女性の体のフシギ part2

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■中医学には、妊娠中のトラブルに関するさまざまな解決法がある
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さて、今回は再び妊娠・出産の話です。

中医学的・基礎体温を見つめるようになって数年後、私は妊娠しました。
妊娠は、自分の体を見つめ直す良いきっかけだと言われますが、私の場合もまさ
にそうでした。どんどん変化していく体に夢中になり、今考えると恥ずかしいく
らいに自分の体をかわいがっていたような気がします。また、もともと体を動か
すのは苦手なのですが、妊娠中だけは平気で何キロも歩いて体力を養っていまし
た。

妊娠中のトラブルに関しても、

「つわり」がひどかったら、まずは生姜+黒砂糖か、古くからつわりに使われて
きた『小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)』や、『香砂六君子湯
(こうさりっくんしとう)』を試してみよう。それでダメだったら、妊娠の維持
に関係する「腎」の機能が低下しているせいかもしれないので、中医師にみても
らおう。

妊娠中の貧血やこむら返り、便秘、不眠などは、「血」が不足しているために起
こることが多いから、「補血」作用のあるものをたっぷり食べておこう。

おなかの張りや痛みが気になったら、まずは「安胎作用」のある漢方薬を、中医
師に相談して出してもらおう。

などなど、準備万端ととのえていたのですが、幸いつわりも貧血もなく、精神的
にも充実した妊娠生活を送ることができました。

一度だけ、ひどい風邪をひいてつらい思いをし、「妊娠中はいつもと体の状態が
違うため、風邪の経過も表れる症状もふだんとは違ってくる」ということを身を
もって体験。こういうときこそ中医学!ということで、中医師に相談し、そのと
きの体の状態に合わせて漢方薬を処方してもらいました。

妊娠中は「薬がのめないから」と、風邪をひいてもひたすら耐える、あるいは、
「気休めに漢方薬でも」という人が多いのかもしれません。
でも、もし「気休め」にしかならないのなら、その漢方薬はそのときの体の状態
に合っていない証拠。合う薬なら、一包のんだだけでも何らかの効果を実感する
ことができます。ただ、妊娠中は飲まないほうがいい漢方薬もありますので、や
はり専門家に相談して薬を選ぶのが正解です。

こんなふうに、楽しく元気に過ごした妊娠期間でしたが、産後には思わぬことが
待っていました。
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■妊娠・出産・授乳は「血」の大仕事
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出産自体はなんのトラブルもなく、精神的にも満足のいくお産だったのですが、
「産後は、赤ちゃんのことで精いっぱいで、自分の体はかまえない」という事実
に気づいたのは、うかつなことに、退院して家に帰ってからのことでした。

妊娠・出産・授乳は、「血」を大量に消費する体の大仕事です。
妊娠中は、おなかの赤ちゃんを育てるために、今まで以上に血が必要になります
し、出産のあとはしばらく悪露による出血が続きます。そして、母乳を体の中で
つくるのも血の役目なのです(なお、中医学でいう「血」は、西洋医学の血液と
は少し解釈が異なります)。
だから、出産後は「血の余り物」である髪の毛がごそっと抜けたりしますよね? 
これは、いかに血ががんばったか!という証しでもあるのです。

そして、出産では「血」だけでなく、大量の汗とともにからだのエネルギー源で
ある「気」も消耗されます。そのため、産後直後は気と血が極端に不足した状態
となるのです。さらに、悪露が順調に出きらないと、全身の血のめぐりが悪くな
る原因にもなります。

このような「気血の不足」と「血の滞り」をあとあとまで残さないためには、こ
の1ヶ月間の養生がとっても大切なのです。

というわけで、中医師から聞いていた「産後の過ごし方」は、主に次のようなも
のでした。

・冷たい水に触らない。体を冷やすものも食べない。
・薄着をしない。足(特に足首とカカト)は冷やさない。
・イライラしない。
・いくら寝ても寝過ぎることはない。たっぷりと睡眠を。
・エネルギーと血を補う食べものと、血のめぐりをよくする食べものを食べる。
・消化しやすく、あっさりしたものを食べる。
・目はできるだけ休める。
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■すべての人の産後を快適にしたい!
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生理がふだんの掃除だとすれば、出産は一生に何度とない体の大掃除です。この
チャンスに出すものをきっちり出して、産後はじっくりとエネルギーと血の補給
に努めれば、その後の病気予防や更年期障害の予防につながります。

出産年齢が比較的高かった私にとっては、まさに一生に一度のチャンス!出産で
私も生まれ変わろう!と、気合いは十分。台所仕事をしなくて済むように、出産
前にたくさんお惣菜を作って冷凍室にストックし、入院中のスリッパはカカトを
包んだタイプのものを選ぶという念の入れようでしたが、この時点では「赤ちゃ
んのいる生活」のことがまるで分かっていませんでした。

・とにかく大量の洗濯物!
  →冷たい水をまったく触らないというわけにはいかない
・夜中もしょっちゅう起こされるうえ、おっぱい&オムツ替えに30分はかかる
  →慢性的睡眠不足
・授乳をしているとおなかが空く
  →消化のいいものばかり用意していたので、冷凍室はあっという間に
   カラッポ
・赤ちゃんはわたしを思うままにコントロールする
  →身も心もヘトヘトに

などなど、守りたくても守れないことがたくさんあることに気づき、自分ではど
うにもコントロールできない状態に。周囲の助けを借りてなんとか切り抜けたも
のの、産後の疲れをその後の体にどど〜んと残す結果となってしまったのでした。

母親が心身ともに元気であることが、赤ちゃんにとってもいちばんなのに、充分
な休養をとることさえできない産後。そのうえ、私のようにタブーに縛られた状
態になると、「やっちゃいけないことをやっちゃってる〜」という思いばかりが
先行し、かえってストレスをためることにもなります。

今思えば、養生ができないことを中医師に相談して、他の対処法(体の状態に合
わせた漢方薬を用いるなど)を教えてもらえばよかったのですが、この時期、自
分のことはすべて後回しになってしまっていました。いつまで経っても体調が元
に戻らないことに不安を覚え、今こそ漢方薬や鍼灸による治療を受けておくべき
だ、と気づいたのは、産後半年以上経ってからのことだったと思います。

すべての人がもっと産後を快適に過ごせるように、私にできることはないだろう
か?そのとき、中医学の知恵は、どのような形で活かすことができるのだろう?
出産以来、ずっとこのことを考え続けてきました。そして、たどり着いたのが、
「助産師さんと中医学をつなげよう!」ということでした。

助産師さんは、妊娠〜出産だけでなく、産後も頼れる存在です。私自身も、本当
に何度助けられたことか……。助産師さんのアドバイス&マッサージがなかった
ら、私の産後はもっともっと辛いものとなっていたことでしょう。

お産に関するたくさんの知恵を持っている助産婦さんに、中医学のことも知って
もらい、それぞれの人の妊娠・出産・産後の状況に合わせてうまくアレンジして
もらえたら、どんなに心強いだろう!と思ったのです。
自分の経験や取材を通して、漢方薬(日本では食品扱いになっているもの)や、
お灸を経験的に用いる助産師さんが多いことを知ったのも、きっかけのひとつに
なりました。

こうしてスタートさせたのが、「妊娠・出産・育児にかかわる人々と、中医学を
つなげる活動」です。プロ(助産師)とプロ(中医師)をつなげていくばかりで
なく、妊娠〜出産〜産後、そして子育てをするすべての人たちに、私なりに中医
学の情報を提供していきたいと思っています。

                                                    Text by xizi  
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 ◆xiziの楽しい中医学−その3「気が抜けると風邪をひく」のはなぜ?

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■「気」は「エネルギー」?
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こんにちは。中医学ライターのxizi こと 高島系子です。

深まりゆく秋を感じる今日この頃。1年でいちばんさわやかな季節ですが、目の
前には本格的な風邪のシーズンが迫ってきています。でも、不思議なもので、ど
んなに風邪が流行していても、気が張っているときには、ひかなかったりしませ
んか?たとえば、仕事が忙しいとき。子どもが高い熱を出しているとき。大切な
行事が目の前にせまっているとき・・・。

「風邪なんてひいていられない」という気合いが、どんな予防薬より効くことは
誰もが経験的に知っています。ただ、往々にしてその気合いは長続きせず、ほっ
とした瞬間に「のどが痛い」「なんだか寒けがしてきた」ということに……。

いったいなぜ、気が抜けると風邪をひくのでしょう?
気が抜けるとき、体の中ではどんなことが起こっているのでしょう?

ここで注目して欲しいのが、「気」という言葉です。

「気」=「気持ち」、「気が抜ける」=「こころの緊張が緩んだ状態」と思われ
ることが多いようですが、「気」という言葉には、じつはもっとたくさんの意味
が含まれています。

ためしに、「気」のつく日本語を思い浮かべてみましょう。
「気が抜ける」「気が張る」「気合い」「気が強い」「気を失う」「気の毒」
「元気」「気配」「気体」「気が散る」「気を吐く」「気を回す」「気が知れる」
「気が短い」……辞書を引けば、まだまだ出てきそうです。

こうして並べてみると、「気」には、「気持ち」「こころ」以外に、「エネルギー」
といったような意味があることが分かるはずです。「気」を「エネルギー」と
とらえると、「気が抜けると風邪をひく理由」がちょっとだけ見えてくる気がし
ませんか?
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■「気」にはウイルスから体を守る力がある
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中医学では、「気」というエネルギーに、さまざまな働きがあると考えています。
例えば、

・消化・吸収・排泄を正常に行う働き
・血をめぐらせる働き
・体温を保つ働き
・内臓を正常な位置に保つ働き

そして、ウイルスや細菌などの外敵から体を守るのも、気の仕事のひとつなので
す。

この「ウイルスや細菌から体を守る働き」をもつ「気」は、特別に「衛気(えき)」
と呼ばれています。抵抗力のようなもの、と考えると分かりやすいかもしれませ
ん。

この「衛気=まもる気」という名前を持つ「気」は、ふだんは体の表面(皮膚、
鼻、口など)にみえないバリアを張りめぐらせて体を守っています。よく、風邪
をひきそうなときに、体の表面がゾクゾクしたり、鼻がムズムズすることがあり
ますが、これは、まさに「衛気」とウイルスが戦っていることを示す症状なので
す。

ちなみに、ウイルスや細菌などの病理物質は、中医学では「邪(じゃ)」と呼ば
れます。突然はじまり、変化しやすく、まるで自然界の「風」のような性質をも
った「邪」。

それが「風邪」というわけです。

つまり、緊張から開放されて「気が抜けた」ときは、「衛気」も不足して、体表
面が緩んだような状態になり、「風の邪」が「衛気」のバリアを簡単に突破して
体の中に侵入する=風邪をひく、ということになります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■体の声に耳を傾けてみると
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では、いつも気を張った状態でいれば、衛気も充実して風邪をひかないですむの
か?というと、そうではありません。

ストレスや緊張で、いつも気がピン!と張りつめた状態になっていると、今度は
「気滞」という状態が起こって、イライラしやすい、胸や脇腹が張る、ストレス
に弱くなる、などの症状が表れ、血のめぐりが悪くなったり、内臓が機能低下を
起こす原因にもなります。

「気が抜けると風邪をひく」のは、「気を緩める必要がある」と体が判断してい
るのだと考えることもできます。そういう意味では、風邪をひける体であること
もたいせつ、といえるのかもしれません。

「気が抜けると風邪をひく理由」、なんとなく分かっていただけたでしょうか?
えっ、言葉遊びのようで、よく分からない?

では、次号にて私の「衛気不足体験」を披露しましょう!

                                                    Text by xizi  
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◎【ワハハ・中国医学の世界へようこそ!】
 ◆xiziの楽しい中医学−その4 風邪をこじらせないコツ 〜私の「衛気不足」体験談〜

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■「気」の不足が風邪を招く?
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インフルエンザが猛威を奮った昨年の冬。私は、おもしろい体験をしました。

昨年の夏から秋にかけてどういうわけか、とても疲れやすく、子どもの風邪を次
から次へともらってしまう、という状態が続いていました。これまでは、風邪用
に何種類かの漢方薬を常備して、症状や体調に合わせて飲む、という方法をとっ
ていたのですが、この時はそんなセルフケアもまったく効かず、風邪をこじらせ
てばかりいました。

これではいけない、と中医師に相談したところ「気の不足は明らか」と指摘され、
その他もろもろの問題点を改善する漢方薬に加えて、「玉屏風散(ぎょくへいふ
うさん)」という漢方薬を毎日服用することになったのです。

「玉屏風散」という薬には、体の抵抗力のもとである「衛気」の働きを高める作
用があります。「風邪をひきやすく治りにくい」という症状のほか、花粉症の予
防・治療などにもよく用いられます。黄耆(おうぎ)、白朮(びゃくじゅつ)、
防風(ぼうふう)という、たった3つの生薬しか入っていない、とてもシンプルで
穏やかな薬です。

▼「玉屏風散」と花粉症について

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■インフルエンザで「衛気」の力を実感
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それから2ヶ月経った、今年の1月下旬。子どもが、保育園で大流行中のインフル
エンザをもらってきました。

高熱で、うわごとまで言い始めた息子が心配で、ほとんど眠れぬ夜を過ごし、よ
うやく熱が下がったときには、看病疲れでクタクタになっていました。そして、
翌日には夫がダウン。ああ、次は私だ、ただの風邪でさえ、こじらせてしまうの
に、こんなに疲れているときに、インフルエンザになんてかかったら、どうなっ
てしまうんだろう!と戦々恐々としていた私だったのですが……。

きたきた!と思ったのは、ほんの一瞬のこと。
体が熱っぽく感じた時点で、「玉屏風散」をやめて、風邪の熱症状をとりのぞく
漢方薬に変え、さぁて、次は咳か?鼻か?と構えていましたが、どういうわけか、
体調はそれほど悪くならず、熱も37.5度までしか上がらないのです。
結局、当時「品不足」と話題になっていた某抗ウイルス剤を、たまたま入手・服
用した夫より、ずっと早く、簡単に治ってしまいました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■漢方薬は使い分けが大事!
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こんなふうに、「衛気を高める漢方薬」をのんだことによって、「風邪やインフ
ルエンザなどの感染症にかかりにくくなる」「かかっても軽くすむ」などの体験
をすると、ともすると絵空事に思える中医学の理論も、ぐんと身近に感じられる
ようになります。

といっても、「玉屏風散」をのめば、誰もが同じ体験ができるというわけではあ
りません。風邪をひきやすく、こじらせやすい人には、比較的使いやすい薬では
あるのですが、体を温める作用があるので、体に熱がこもっている人には不向き
ですし、私のように、体の弱点を補う薬をプラスするといった工夫が必要な場合
もあります。

ちなみに、風邪薬で有名な「葛根湯(かっこんとう)」だって、合うときと合わ
ないときがあります。葛根湯は温めて発汗させる作用が強い薬なので、ゾクゾク
と寒けがして、水っぽい鼻水が出るようなときにはよいのですが、のどの痛みが
ひどく、体がほてって布団をはぎたくなる、などというときにのんでしまうと、
かえって症状を悪化させることもあるのです。こういう「熱い風邪」には、体の
熱をさましながら発汗させる漢方薬(「銀翹散(ぎんぎょうさん)」など)が、
強い味方となります。

大切なのは、風邪を予防したり、治したりするときには、そのときの体の状態に
合った漢方薬を選ぶ、ということです。「漢方薬は即効性がない」「風邪の初期
には漢方薬をのむけれど、効かない」と思っている人も多いようですが、それは
もしかすると、そのときの体の状態に合った漢方薬ではなかったのかもしれませ
ん。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■風邪をこじらせずに治すためには
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じつは、私のインフルエンザ体験には後日談があって、高い熱は出なかったもの
の、食欲がなく、だるくて、胸部や体が締めつけられるような感じが2〜3日経っ
ても消えませんでした。そのときに中医師に相談して出してもらったのが、「柴
胡(さいこ)」という「気」をめぐらせる作用が強い生薬が主成分の漢方薬。1
包飲んだだけで、体がふわ〜っとほどけていくのが分かり、2包目をのんだあと
は、ほとんどいつもの体調に戻っていました。

「玉屏風散」のように、長くのみ続けることで効果が表れる薬もあれば、こんな
ふうに1包で効く漢方薬もあるのです。

風邪ひとつとっても、バリエーション豊富な漢方薬を使いこなすためには、やは
り、中医学の基本的な考え方を知っておいたほうがトクです。最初は、話をよく
聞いてくれる専門家に相談しながら薬を選ぶと、徐々に理論のほうも頭に入って
くるはずです。

ただ、その「専門家」をみつけるのに苦労している人も多いことでしょう。そこ
で、次の機会には、「中医学の診察を受けるには?」というテーマで、専門家の
選びかたや、中医学の診療の特徴を紹介したいと思っています。

                                                    Text by xizi  
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◎【ワハハ・中国医学の世界へようこそ!】
 ◆妊婦は、本当に太っちゃいけないの?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●どうして本の題名が「妊婦は太っちゃいけないの?」になったかというと・・・
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妊娠・出産に関わるすべての人々と、中医学をつなげていきたい…。そんな私の
思いが、1冊の本になりました。

タイトルは「妊婦は太っちゃいけないの?」。

どこが中医学なの?と聞かれてしまいそうですが、これには理由があります。

このタイトルの名付け親は、新潮社の編集担当者である笠井麻衣さんです。企画
の段階で提案してくれたものなのですが、正直言って、最初はちょっと違和感が
ありました。

太る・太らないの話だけだと思われたらどうしよう、とか、中医学、あるいは東
洋医学という言葉が入っていたほうがいいのでは??など、あれこれ悩みました。
でも、あまりにインパクトのあるタイトルで、これに対抗できるような、いいア
イデアが思い浮かびません。

ところが、悩みつつ原稿を書き進めるうち、いつの間にか、自分の気持ちが、だ
んだんとこのタイトルに近づいていることに気づいたのです。

「妊婦は太っちゃいけないの?」なんて、本当に素朴な疑問です。「妊娠中毒症
を防ぐためにも、安産のためにも、妊娠中は太り過ぎないように気をつけて」と
言われれば、「そうか、太っちゃいけないんだ」と素直にそう思ってしまいそう
です。

けれど、本当にそうなのでしょうか?体重計とにらめっこの生活を始める前に、
なぜ太ってはいけないのか、本当に太ってはいけないのかを、もう一度「自分の
体」に当てはめて考えてみると、きっといろんなことが分かってくるはず。その
ときに大いに役立つのが、中医学の理論だと思うのです。

もちろん、体重のことだけではありません。つわり、こむら返り、不眠、おなか
の張り、便秘、逆子、おっぱいのトラブル、尿漏れ、産後ブルー…。こんな妊娠
中〜産後の出来事に突き当たると、つい「どうすれば治るんだろう?」と考えて
しまいがちですが、本当に大切なのは「なぜ」の部分です。

素朴な疑問も、あえて声にみることで、きっと何かが変わるはず。そう考えたら、
「妊婦は太っちゃいけないの?」というタイトルを、とても愛おしく感じるよう
になりました。

単に解決策を並べるのではなく、妊娠中・産後の「なぜ」に焦点を当てたこの本
には、まさにぴったり!と思っています。

そして、その意図をみごとに汲んで、表現してくれたのが、イラストレーターの
100%ORANGEさん。見て見て!と、思わずジマンしたくなるカバーとなりました。

▼こんな表紙ですAbout 100%ORANGE
―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●「自分の体に当てはめて考える」ということ ------------------------------------------------------------------------ 自分の体に当てはめて考える、というのは、簡単なようで、じつは意外に難しい ことなのかもしれません。でも、この視点さえ持っていれば、巷にあふれる健康 情報を読み解くのにも役に立つはずです。 「試したけど、ダメだった」ではなく、自分に合うか合わないかが、あらかじめ 分かるようになると思うのです。 例えば、妊娠中や産後も、 「安定期に入ったら1日2時間以上歩いたほうがいいって、本当?」 「カルシウムをとるために、乳製品は積極的に食べたほうがいい?それとも、赤 ちゃんのアレルギー予防のために控えたほうがいい?」 「授乳中は、甘いものや脂っこいものは本当にNG?」 といった疑問をもつ人は多いと思います。でも、いずれもそう簡単に答えが出る ものではないでしょう。体は人それぞれなので、ある人が実践してよかったこと も、別の人には害になるということだってありえます。 「体にいいこと」ではなく、「自分の体にいいこと」を探すためには、遠回りな ようでも、まずは自分の体と徹底的に向き合ってみることが大切です。 ふだんの顔色は? ツメや髪の状態は? のどは渇きやすい? シミ・ソバカス は多い? シワは気になる? 乗物酔はする? こんなふうに、いろいろな観点 から見直してみると、意外な自分の「体の癖」がみえてくるものです。 もちろん、「体の癖」は、チャートやチェックシートで判断しきれるものではあ りませんし、ちゃんと分かるようになるには、それなりに時間もかかると思いま す。でも、自分の体を見つめ直すきっかけ作りならできるのではないか、という 気持ちで書いたのが、この本です。 「体の癖」が、妊娠〜出産〜産後にどう影響するのかを中心に書いていますが、 「いつかは産みたい」という人にも、すでに出産を経験した人にも、読み物とし て、あるいは中医学の入門書として、興味を持っていただけるのではないかと思 っています。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ●アロマセラピスト和田さんやワハハスタッフRieさんも登場しています! ------------------------------------------------------------------------ じつは、この本には、ワハハと関係が深い方々がたくさん登場します。 まず、ワハハの講座でおなじみのアロマセラピスト、和田文緒さん。和田さんの 精油の使い方には、中医学との共通点を感じていて、ぜひそのことを書きたかっ たのです。 それから、スタッフのRieさん。昨年、Kuriさんや和田さんとともに、Rieさんが 住む南ドイツにおじゃましたのですが、そのときに聞いた数々のエピソードのな んと興味深かったこと!マリエン薬局の授乳・乳腺炎対策ブレンドや、Rieさん が第二子を出産したローゼンハイム助産院の話も出てきます。どれも、私なりに 中医学とのつながりを感じて書いたものです。 そして、MLや講座での皆さんとのやりとりからも、たくさんのヒントをいただき ました。MLでの私の呼びかけに応えてくださり、自分の体験を話してくださった 皆さん、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げます。 本の感想など、お寄せいただけるとうれしく思います。内容に関する質問にも、 メルマガやMLを通して、できる限りお答えするつもりです!ぜひぜひお待ちして います。 Text by xizi   ======================================================================== 【Kuriの読んで使った!ひとこと書評】 まず、結論から言ってしまうと、今回の高島さんの本は、まさしく私たちが待ち わびていた本であることは間違いない。知りたいのに誰も教えてくれなかった妊 娠・出産をめぐる知恵が厳選されている。私たち、子育てワハハが志向している 方向と極めて近いところにある。 ちょうど一年前、高島さんとドイツに一週間ちょっと滞在したが、彼女の興味は 敏感なセンサーのように24時間稼動していた。私が地ビールで飲んだくれている 間も、漢方との関連を探っていて、彼女の観察力と取材は粘り強さが違う。 ドイツからの帰国後、私は計ったように妊娠、出産したのだが、いつも高島さん に食養生などのアドバイスをいただいていた。そして臨月の逆子に鍼灸を、産後 ヒドかった貧血には婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)をタイミングよく教えてい ただいた。逆子は3回の施術で、婦宝当帰膠は、授乳ブレンドに溶かして飲んだ ら、貧血によるフラつきが一日で改善した。 どのアドバイスも適確で手軽に出来る。高齢で不精な私もラクに過ごせているの は、高島さんによるところが大きい。その知恵がこの一冊で手に入るのだから、 世の中、本当に便利になったものだ。妊娠前〜産後の人にはとりわけおすすめ! ▼購入はこちらからどうぞ ----------------------------------------------------------------------○


 
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