釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ

北海道・釧路川のほとりに暮らしながら、カヌーのガイドをしている「Voice of
Wind」の木名瀬一家。大自然と向き合いながら、北の大地でのシンプルライフ、その
中での子育ては、私たちにも、また新しい視点を教えてくれそう。さわやかな川風を
感じさせてくれるお話が届きます。

◆豚さんを飼ってみました その1 

◆手作りの「ワラの家」が完成しました
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
◆秋のごちそうをいただきます
◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました
◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
◆新緑の恵みを楽しんでいます
◆川のほとりで暮らしています

釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆川のほとりで暮らしています
■はじめまして
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今月から、北の大地の暮らしぶりをお便りすることになりました、北海道の木名
瀬さなえです。ビッグスケールの大地に、ぽつんと建てた小さな小さな家に住み、
一家でカヌーのガイドをしています。北の国のつれづれ話、時々読んで北の大地
に思いを馳せていただければ幸いです。

私達の住む北海道・弟子屈(てしかが)町は、夏と冬の気温差60℃の、生活する
にはちょっと厳しい場所…。でもまだまだ自然が残るこの大地で、開拓者魂あふ
れる力強いじーちゃん・ばーちゃん達にいろいろなことを教わりながら、北の豊
かさをかみしめて生活させてもらっています。

▼弟子屈町HP
 http://www.hokkai.or.jp/tesikaga/index.html

ここで暮らし始めて8年、夫と私だけだった「一家」も4年前からは小さな息子が
加わりました。

釧路川のほとりに建てた小さな自宅は、最初は見わたす限りの草原にぽつんと建
った「大草原の小さな家」でしたが、一軒、また一軒と家が建ち、今ではちょっ
とした集落になっています。でも近所には学校も商店も全くなく、私の日課は、
9km離れた街の保育園まで、日曜をのぞく毎日、息子を送り迎えすることです。
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■私たちは川の案内人です
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カヌーのガイドの仕事、と言うとちょっと分かりにくいかもしれませんが、要は
カヌーを使った川の案内人です。

主に3泊4日や4泊5日、時には6泊や10泊、キャンプをしながらの川旅へご案内し
ています。カヌーの中にはテントや寝袋、鍋、食器に食材、テーブルにイスと、
生活用具をぎっしり詰め込んで…。
もちろんキャンプばかりではなく、半日や1日の短い旅へもご案内しています。

▼川風が気持ちいい
http://city.hokkai.or.jp/~kinase/

年に何回かは、ホームグラウンドの釧路川を飛び出して、北海道内、そして本州
のいろいろな川で遠征ツアーも行なっています。ハイエース(ワゴン車)にカヌ
ー、生活用具を一式積んで、家族全員で出かけるのです。

▼旅するハイエース 

そして今は仕事の合間に、ゲストが宿泊できる『ワラの家』作りに没頭していま
す。どんな家なのかは、またご紹介していければと思います。 

仕事と家作りの合間にも、ひと冬分の薪を切ったり運んだり、小さな畑もそれな
りに世話をし、山菜も採りに行かなくてはならないし、なんともせわしない北国
の生活。

どんどん広がる都市と田舎の差を、シンプルな生活のよさを見直すことで、ちょ
っとずつ縮めていければ…そんな想いで、ささやかな通信をお届けしていきたい
と考えています。
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■春の旅路から…本州遠征ツアー
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5月…ここ北の大地では、まだあちらこちらで雪が残っていますが、春のさわや
かな空気の中、コブシやツツジの花が目にも心地よく咲きそろっています。何よ
り、長く厳しい冬が明けた喜びが、北の大地を活気づけているのです。

しかし、朝晩は氷点下に下がることも珍しくなく、やはりまだカヌーには少し早
い時期。となれば、いざ向かうは南国。

GWの連休に合わせて、今年も3年連続で本州遠征ツアーに出かけました。目指
すは南紀、和歌山県。ここで熊野川と古座川、ふたつの水を旅するのです。

出発準備に追われながら、何より気がかりなのは子どもの体調です。出発の3〜
4日前から鼻が垂れはじめ、時折咳が…。保育園では、ロタウィルスに感染して
高熱や下痢に悩まされている子がいるとかで、出発までドキドキの日が続きまし
た。が、何とか家族全員元気にフェリーで出発!
 
ツアーの間は、夫がゲストと川へ出て、私と息子は陸上班です。昼間は、食材の
買い出しをし、次のキャンプ地へ車と機材を移動。到着したら、テーブルやイス、
調理器具回りをセットして、薪を集めて、夕食の仕込みを始めます。

焚き火にかけた鍋と薪の様子を気にかけつつ、川ぎわで遊んでいる息子が流され
ないか見張りつつ、さっきから上で食材を狙っているトンビが降りてこないか監
視しつつ、食材を刻んでいきます。

▼ゲストの到着を待つ間、河原でオモチャのユンボーを走らせる息子 
 
夕方ゲストがキャンプ地に到着すると、やっとホッとして、今日の旅の様子に耳
を傾けながらビールを飲む一瞬が、う〜ん最高!到着の早かった時には、みんな
で川へ入って遊んだりもしました。
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■川は遊び場、そして生活の場
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川では、きれいな小石やおもしろい形の流木、北海道のものとは違うどんぐりや
松ぼっくりを拾うのが、大好きな息子ですが、今回ハマッたのが『石割り』。父
ちゃんに、石の"目"の見立て方を教わり、「すぐ割れる石」と「割れにくい石」
を見分けるのに真剣です。

私が「こんな石はどうかナー」と渡すと、「これは"目"じゃなくて"シワ"なんじ
ゃないか〜?」などと批評。でもコドモの真っ直ぐな感性が、割れる石を続々見
つけるのには、我々オトナもちょっとビックリでした。

そして、ゲストも交えた『石積み』ゲームも盛り上がりました。最初に決めた基
準石より大きな石を、どんどん積み重ね、崩した人は、大きな声で元気よく「わ
ん!わん!わん!」と3回吠えなくてはなりません。

シンプルな遊びですが、これがおもしろい! 石を見る目が変わる楽しいゲーム
で、息子もちゃんと参加していました。

▼父ちゃんと石積みに興じる 

旅の間は、川で寝て、川でご飯を食べて、そして川で遊びます。
息子もそんな「川の生活」を、何の抵抗もなく受け入れて過ごしています。

こうして今回も旅が終わり、無事に北海道へ戻ってきました。
まだ雪の残る大地で、それぞれの日常がもどってきます。キャンプもいいけど、
やっぱり久しぶりのお布団もい〜い気持ち!
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次回は新緑まぶしい釧路川の様子をお届けします(予定)。
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◆釧路川カヌーツーリング[Voice of Wind]
http://city.hokkai.or.jp/~kinase/ 
 川を旅してみませんか?心にのこる、ステキな旅が出来ますように…
※これからの川旅情報(釧路川&歴舟川 6/20〜22 ほか)
詳細はHPをご覧ください。
 
                                                 text by 木名瀬さなえ 
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆新緑の恵みを楽しんでいます
■芽吹きの季節はにぎやかです
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夏至も近づき、ずいぶんと日も長くなってきた先日のことです。
暗くなりかけた道を急いでいる時、家の前でぴょんぴょんと道を横切る2匹の動
物を息子が見つけました。

「あっ!鹿だ!」の声に、えっ、どこどこ…とあわてて目をこらして見てみると、
人の気配に驚いて身動きもせずにたたずんでいる、茶色い大きなウサギ達。我が
家の敷地内で、しかもこんなに間近で見たのは私も初めてで、息子と二人で大喜
びでした。

ウサギが増えてきている、と最近よく耳にします。
野生のウサギは、弱肉強食の動物界においては、ピラミッドの底辺に生きていま
す。ウサギが増えれば、動物が増えている証し…とか。
少なくとも、我が家周辺においては、ウサギが増える=キツネが減った、という
ことは言えそうです。
家の前で目にした2匹のウサギが、どんなことを意味しているのか、今はまだ私
にも分かりませんが、静かに見守っていきたいと思います。

何はともあれ新緑の季節。
カッコウやツツドリがやかましく…いや、にぎやかに鳴き始め、畑の春耕も始ま
りました。もちろん、我が家の小さな畑にも、畝(うね)が切られ、種がまかれ
ています。
ほうれん草やサラダ菜、大根やニンジン、お芋やブロッコリーが、かわいらしい
芽を出して、畑を彩っています。

牧草地では、タンポポたちが一面に風に揺れ、黄色いじゅうたんのようです。
そして、その上には肥料となるべく、牛に由来する堆肥が撒かれ、その匂いでも、
ああ、もうこんな季節なんだな、と感じるのです。
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■おいしい山菜の季節が始まりました
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暖かくなってきたこの時期、楽しみは、やはり山菜。
我が家のまわりにも、ちょっと足を延ばせば、さまざまな美味しい春の幸があっ
ちにも、こっちにも。
クレソン、三つ葉、ギョウジャニンニク、ふき、コゴミ、山ウド、ワラビにゼン
マイ…

中でもコゴミは、庭にたくさん生えているので、息子は一人でせっせと摘んでい
ます。

▼我が家の薪小屋の前で、コゴミ採集に励む息子

「ミチトね、ちょっとコゴミ採ってくるよ〜」と外へ出て行く息子の声を聞き、
あわててお湯を沸かすのです。お湯が沸かぬうちに、もう両手いっぱいのコゴミ
を採ってきます。まわりの毛をとって、お湯にどぼん!ぐーるぐーるとかき混ぜ
て、ザルに上げれば、ハイ、出来上がり。
茹でるだけで食べられる山菜は、面倒くさがり屋の私には貴重です。

炒めても、おひたしでも、みそ汁でも、何でもいけますが、私と息子のお気に入
りはゴマ和え。ゴマをすって、ちょっとマヨネーズも入れた特製ゴマダレで、い
くらでも食べられます。

そしてこの時期、我が家の食卓に、そしてツアーの食材に、欠かせないのがクレ
ソンです。
地元の人は「台湾ゼリ」と呼び、おひたしなどで食べることが多いのですが、私
たちはもっぱらサラダ派。ちぎっただけのクレソンに、さらし玉ねぎを散らして、
ニンニク風味のドレッシングで食べるのが、お気に入りです。

先日も、その日から始まるツアーのために、朝早くから一人でクレソン採りへ、
といっても、車で3分。気持ちのいい湿地帯に、わんさかと一面クレソンが生え
ているのです。

▼クレソンの沢。沢の両側が一面びっしりクレソン畑です

車を降りると、ガサガサ…と足音。先客?と見てみると、すぐ近くで一頭のシカ
が私を見て、あわてて山の奥に走っていくところでした。
驚かせてごめんねー。

沢に入って、もくもくと、喜ぶゲストの顔を想像しながら摘んでは入れ、摘んで
は入れ…。あっという間に袋いっぱいのクレソンが大収穫。
家を出てから戻ってくるまで、しめて15分。
コゴミもクレソンも、「山菜」と呼ばれる山の幸ではありますが、私にとっては、
山より身近な野に生える菜、「野菜」なのです。

山で出会ったシカのかわいいお尻が、元気をくれた一日でした。
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<おまけ> ワハハの読者の方との出会いがありました

先日、釧路湿原の細岡カヌーポートでカヌーの到着を待っていた時、「もしかし
て、子育てワハハの…」と声をかけられ、ビックリ!
なんと隣町に住む、メルマガの読者の方でした。

ハイエースに書いてあるVoice of Windの字を見て、声をかけて下さったのです。
彼女は、息子さんの乗ったカヌーの到着を待ちながら、下のお子さんたちとザリ
ガニ釣りをしているところでした。
こんな出会いもあるんですね〜。本当、嬉しかったです。

次回は、夏まっさかりの北の大地の様子をお届けします(予定)
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◆釧路川カヌーツーリング〔Voice of Wind
水ぎわでは、動物たちの子育てシーズンが始まりました。
川を旅してみませんか?
これからの季節は、1dayのツーリングもおすすめです。
ゆっくり水の上を漂い、河畔で食べるランチはとびっきりです。       text by 木名瀬さなえ  ----------------------------------------------------------------------○

 

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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
■夏が来た?ほんとに?
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北の大地にも、短い短い夏が訪れています。
12ヶ月のうちの、たった2ヶ月。本当につかの間の"潤い"です。

夏の釧路川は気持ちいいよ!

夏が始まったかと思うと、道ゆく旅人の姿が、突如として増えてきます。
ライダー(バイクの旅人)、チャリダー(自転車の旅人)、トホダー(歩きの旅
人)、レンタカー利用者など、さまざまなスタイルの旅人を、いたるところで目
にし、否が応でも夏を実感させられます。

ちなみにライダー・チャリダーは北海道における一般用語ですが、トホダーは、
我が家独自の言葉で、一般には「バックパッカー」と言われています。

町の商店でも、買い物に立ち寄る旅人の姿をよく見かけます。
先日、駐車場に停めてあった、大宮ナンバーのバイク。「南風見田浜野営族」
「welcomeおきなわ」「ねぶた」「熊出没注意」…。

全国各地を走ってきたことを教えてくれる、数々のステッカーがバイクに貼って
あり、なかなか壮観。いいなーいいなーと、一人旅に憧れる私は、ついつい見と
れてしまうのでした。

それにしても、この『夏』のなんと寒いことでしょう。
暦にはしっかりと「大暑」の文字がありますが、7月後半の釧路川のほとりは、
日中の最高気温も15度前後と、少々異常な寒さが続いています。

折しも牧草地では、一番草の刈り取り期。
牛や馬たちにとって、いちばん栄養のある一番草は、ふさふさ茂って、いかにも
美味しそうですが、刈り取った後、雨にあたると栄養分が地面に流れ出してしま
います。

酪農家の方たちは、天気図とにらめっこの毎日。それでも、気まぐれな雨雲に、
刈り取ったばかりの草を濡らされている光景を、今年は何度も見ています。

はーやく来い!なーつよ来い!
子どもたちも、水遊びセットの入ったバックを持って、太陽さんを待っているん
ですから!
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■小さな畑は大賑わい
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短かろうが寒かろうが、夏の間にやるべきことは、やらねば!
時を惜しむように、木々の緑は増し、鳥や動物は子育てにいそしんでいます。
暑かった6月には6月の葉っぱ。寒い7月でも7月の葉っぱ。
ちゃんと季節がめぐっていることに、安心し、感心もします。

そして、家の畑の作物も、ぐん!ぐん!と育っています。
畑と言っても我が家の畑は、農家の方から見たら、本当に小さな小さな、
「家庭菜園」です。

春の芽吹きの頃は、時間もたっぷりあるので、あれこれと手をかけて世話をし、
それなりに畑らしいスペースに見えるのですが、夏の今はカヌーシーズン最盛期。
雑草と、植えてもいないのにわんさかと生えてくる赤じそに覆われ、その間に作
物が、見え隠れして育っているありさま。

低温の影響で、育ち具合はそれほどよくありませんが、それでもほうれん草、サ
ラダ菜、大根、間引きの白菜など、早々と採れる野菜たちが、ちょっとずつ食卓
にやってきてくれます。

中でも一番人気は、野イチゴ。
草地に、ぼうぼうと生えていたイチゴの苗を、少しずつ畑に移植したもので、そ
れはそれは力強い苗です。何も手入れはしないのですが、毎年ちょっとずつ勢力
を広げ、大きくてりっぱなイチゴの実をつけてくれています。
香りが強くて、とっても甘いんです。

でもでも、私と夫の口に入るのは、年に…3個くらい。
何しろ、水やりのかたわら、片っぱしから食べてしまう人がいるものですから。
「犯人」は、イチゴの匂いをぷんぷんさせながら、ニコニコと私のそばに来るの
ですぐに分かります。

さてさて、その息子にとって、今年の夏はいつもと違う、お楽しみの季節となっ
ています。

それは、生まれて初めて自分の「畑」を持ったから。

といっても、それはちょっと大きなプランターに過ぎないのですが、自分で種を
選び、蒔き、毎日水をやって育てた、大切な「畑」です。

▼これが、ボクの小さな畑

ニンジン、豆、大好きなイチゴ、それに大根やら何やら、小さな「畑」にぎゅう
ぎゅうぎゅう。押すな押すなの大盛況で植わっています。

「芽が出てきたぁ!」
「イチゴの花がひとつ、ふたつ、みっつも咲いてたよっ!」
「ちっちゃな実ができてたの」

小さな変化を見守ること、3ヶ月。とうとう、イチゴの収穫ができました。それ
も大きな実!
感慨もひとしお…かと思いきや、あっという間に、ぺろっと食べてしまいました。

▼こーんなリッパなイチゴがなったんだ!

さあ、お盆に入る前に、いっちょ雑草でも抜いてあげますか。
久しぶりに日が差した先日、畑の草取りを終えて、夕食の準備をしていると、夫
が息子に話す声。
「あれぇ、今日かーちは畑の草取りしたのかぁ?
出てきたばっかりのホウレン草の芽、取っちゃったんだね…」

えぇ〜っ…しまった。。。


▼いざ、畑へ。保育園から戻っての日課です 
        
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次回は、一足早い秋を、北の果ての旅模様と一緒にお届けします(予定)
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◆釧路川カヌーツーリング〔Voice of Wind〕
http://city.hokkai.or.jp/~kinase/  
水ぎわでは、動物たちの子育てシーズンが始まりました。
川を旅してみませんか?
これからの季節は、1dayのツーリングもおすすめです。
ゆっくり水の上を漂い、河畔で食べるランチはとびっきりです。

                                                 text by 木名瀬さなえ 
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました

■ナナカマド、タンチョウヅル…秋の到来を感じて
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北の大地は冷気に覆われる季節となりました。

山のキャンバスは、赤・紅・朱・黄・橙・黄緑・茶…さまざまな木々の彩で賑や
かです。畑では、ジャガイモや、とうきび、ビートなどの作物が、早霜に追い立
てられるように 刈り取りに大忙し。

道端には秋を告げるオオハンゴンソウが揺れています。マーガレットの黄色版と
いった感じで、秋になると真っ先に目につく花です。

ドラマ『北の国から』では、100万本の薔薇の代わりに、100万本のオオハンゴン
ソウを贈って、蛍ちゃんにプロポーズする、という場面がありました。漢字で書
くと、"大反魂草"、脚本家倉本さんが、ドラマに使ったのがなんとなく判るよう
な気がします。

ナナカマドの木も、真っ赤に熟れた実をどっさりつけています。この季節になる
と、あ、ここにもナナカマド、あらあらここにも…。ナナカマドってこんなにあ
ったかしら〜と、毎年のことながら、この木の多さに驚きます。

「薪にして焚くと、七つのカマドを壊してしまうほどの堅い木」という意味のナ
ナカマド。いつか枯れ木を見つけたら、薪にして焚き火で実験してみたいと思っ
ています。

先日は、ツアーの帰り道に道端でタンチョウヅルを見かけました。道路まであと
1メートルという至近距離の牧草地。夫婦そろって仲良く食事中でした。

春先〜初夏にかけて、子育てが忙しく、住みかである釧路湿原からは、あまり離
れないのですが、夏の終わり頃から、親子で里に降りてくる姿をよく見かけます。
身長は1メートルあまり…とっても大きくて、気高い姿。遠くにいてもすぐにわ
かります。

一度結婚すると、一生同じ相手と連れ添うタンチョウヅル。先日見かけた夫婦に
は子どもがいないようでした。時期的には、まだ子連れの季節。夫婦だけのタン
チョウヅルを見かけると、子どもはどうしたのかな。生まれなかったのかな。そ
れとも…と思いをめぐらせてしまいます。

それにしても本当に道路のすぐ近くだったのにな〜。車が近づいても驚きもせず、
食事に夢中。運転していたのは私一人だったので、思わず「あーっ、もったいな
い」と、つぶやいてしまいました。ゲストにも息子にも見せたかった…。
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■今年最後の遠征ツアーでした
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秋風の吹き始めた9月初旬、私たちは今年最後となる「一家総出」の遠征ツアー
に行ってきました。目指すは北の果ての大河、天塩川。全長256km(全国第4位)
のうち、最後の約100kmが今回の旅の舞台です。

同じ北海道内ですが、我が家のある弟子屈(てしかが)町からは、北へ400kmほ
ど離れています。本州で言えば、さしずめ東京〜関ヶ原と同じくらい。

最果ての地を流れる大河を、ゆっくりじっくり、旅は5日間の予定です。今回の
旅は、常連さんの多いツアー。看護婦、サラリーマン、学者、教師…。職業は違
えど、みんな年に数回の川旅を楽しみに、遠路はるばる荷物をかついでやってき
てくれる仲間たち。

私たちの仕事は、そんなゲストの皆さんに、ゆっくりと川で心の洗濯をしてもら
うこと。それぞれの心に心地いい川の時間が流れるよう、心を砕きます。お家に
帰ってからも、ふと心によみがえるような旅をしてもらえるように…。

▼天塩川の川面を漂いながら… 

旅の間の私の大仕事。それは、みんなで食べる食事を、河原で提供することです。
今回は、全部で11食。メニューは事前に考え、仕込みをしてツアーに臨みます。

外で食べるご飯ですから、キッチンも外。小さなテーブルを調理台に、食材を切
ったり刻んだり。水は近くで汲んできたものを大事に使います。調理用のバーナ
ーも持っていきますが、滅多に使うことなく、ご飯を炊く、シチューを煮る、薄
焼き卵も焼き魚もパンケーキも、ほとんどすべて焚き火で調理します。

だから、まず料理を始める前に、薪拾い。薪を拾うのは、主に息子の仕事です。
キャンプ地は毎日変わるので、行く先々のキャンプ地で薪拾いが待っています。
私は、車から機材を降ろすのに大忙し(時には車から河原までが、とっても遠か
ったり、ヤブを越えて行かなくてはならなかったり…。なかなか時間がかかるん
です)。せっせと機材を降ろしている間に、息子が薪を拾ってくれています。

薪も手近にわんさかあればいいのですが、大抵は広い河原のあちこちに点々とし
ています。それを息子は何の苦もなく…と言いたいところですが、実際は「あと
何回運ぶの〜」などと、チョッピリため息をつきながら集めてくれます。

薪を集めるよりも、早く石やら貝やらで、水遊びしたいのです。でも珍しい形の
薪を見つけると、大喜びで「これは燃やさないでね!」と言ったりします。(え
〜っ!燃やしちゃだめなの…)

汗を流して集めた薪。貴重です。でも薪拾いは当たり前の事なので、大げさに誉
めたりはしません。心をこめて「ありがとう」と言います。

今回はツアー中、天気に恵まれ、薪はいつも乾いていたので、火をおこすのもラ
クチン。おかげで料理も大いに、はかどりました。もちろん、ゲストのみんなに
も手伝ってもらうんですよ。そして「秋」は北海道の美味しい食材がいっぱい手
に入る時期です。

秋の川べの夕ごはんはこんな感じ。

・かりかりナッツと秋刀魚のレタスサラダ
・自家製大根とニンジン、スペアリブの梅ポトフ
・茹でトウモロコシ
・秋鮭のちらし寿司
・揚げじゃがと自家製ベーコンのソテー

ね、秋は食材がいっぱいなんです。
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■旅はゆっくり進んでいきます
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乾いた風は気まぐれに大河を吹き抜けます。時おり姿を現すオジロワシ、山をこ
だまするツツドリの声…。
朝起きると、川面からは気あらしが立ち上っています。もやが消え、太陽が昇り、
一日がスタート。テントをたたみ、荷物をカヌーに積んで、川へ出発。

▼朝もやの中、さてコーヒーでも入れようか 

夕方キャンプ地に着き、みんなで焚き火を囲む。あんな話、こんな話…。一人一
人の胸に、静かに一日が暮れ、小さな我が家であるテントで身体を休める。そん
な毎日が過ぎていきます。

最後の夜に泊まった浜は、「カラカラ石の浜」と私が呼ぶ場所。カラカラに乾い
ていて、踏むとカラカラと音がする独特の石がたくさん散らばっています。

浜に続く道をちょっと登ると、広々続く草原のはるか彼方に、利尻富士を望むこ
とが出来ます。その利尻富士の横に、ゆっくりと夕陽が沈んでいくのを、みんな
で車の屋根から眺めました。旅の最後の、とっておきの風景。胸にしまって大切
に持ち帰ります。

▼車の屋根から、日本一の夕陽を眺める  

こんな大河も冬には一面結氷し、まっしろの川路となります。冬の間、ずっと眠
り続ける氷の大河は、3月の末、どどおーっと轟音を響かせながら一斉に流れ出
す「大解氷」の時を迎えるのです。

静から動へ、そしてまた夏が過ぎ秋が終わり、流れは凍りつく。淡々と繰り返さ
れる自然の営みです。

毎年、この「天塩川の大解氷」の日時を当てるクイズがあります。賞金は100万
円。今年の大解氷は3月31日午前11時59分。一分の狂いもなくピタリと当てた人
が2人もいたそうです(賞金は半分に分けたそうです)。来年は皆さんもいかが
ですか。

「一家総出」のツアーが出来るのも、もうあとわずか。息子が小学生になれば、
こんな風に出かけることは出来なくなるでしょう。でも、息子が愛する釧路川の
ほとりの日常は、これからも続いていきます。そして、「旅」を提供する私たち
の生活も…。

▼旅の間、夕方の、このカヌータイムを、何より楽しみにしている息子  

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次回は、初秋の釧路川の風景と、美味しい話題をお届けします(予定)
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◆釧路川カヌーツーリング[Voice of Wind]
  http://city.hokkai.or.jp/~kinase/
今年の紅葉は、近年では久しぶりの美しさ。釧路湿原も黄金色に染まっています。
秋の彩を愛でる釧路湿原のカヌー、10月いっぱいまでは楽しめます。

   text by 木名瀬さなえ 
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆秋のごちそうをいただきます
■秋も、もうすぐ終わりです
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美しい紅葉は、山の葉っぱの饗宴。散りゆく前にと、最後に、せいいっぱいのお
めかし。雪虫がちらちらと舞い始め、紅葉は枯れ葉となって、また山へと還って
いきました。葉が落ちた山は、ひと回り小さくなり、ジッと冬を待っています。

カサカサッと乾いた風が吹いて、澄みわたった秋の青空に、クワークワーと響く
のは、シベリアから帰ってきた白鳥の一陣の声。長い冬を、暖かな屈斜路湖のほ
とりで過ごします。どこか物哀しい風景、それでいて大好きなこの季節です。

小さな我が家の畑で採れる露地物野菜は、霜の近づく頃になると、もうニンジン
くらいしか収穫できません。でも、なぜかこの時期になると、どこからか美味し
い野菜たちが、たくさん我が家にやってきます。

近所の農家の方、友達の家、どこへ顔を出しても「大根いるかい?」「キャベツ
持ってきな」「カボチャはあるかい?」「ホウレン草、置いておくからね」

時には、「あんたんとこの漬け物も漬けといたから、早く取りにおいで」と、電
話を頂くこともあります。おかげで野菜を買うことはほとんどないくらいで、本
当にありがたい限り…。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■山ブドウ採りは宝探し!
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忙しい秋には、大事な仕事が待っています。我が家恒例の、"山ブドウ採り"です。
たくさん採ってきて、それを一年分のビネガーに加工するのです。

「山ブドウはナ、ひと霜当たった頃がいちばんいいんダァ」

北海道へ引っ越してきて、じっちゃんたちにそう教わってから、毎年教えは忠実
に、"ひと霜あたる"のを待って出かけます。

今年も10月の半ば過ぎ、息子と二人でブドウ採りへ出かけました。車を運転しな
がら、左右の木々に目を光らせます。探す時の目印は、山ブドウの紅色の葉っぱ。
どれかな、どれかな…どこかにないかな…?

「あ!あった、あったぁ!」 
息子の歓声に振り向いてみると…葉っぱは立派だけど、実のついていない山ブド
ウだったり。(実のならない山ブドウの蔓は"オスの木"と呼んでいます)

あちこちと、きょろきょろしながら進んでいくと、あったあった!
たくさん実のついている蔓を発見!まるで宝物を見つけたような気持ちです。

▼山ブドウ、みーつけた!  


高いところについている実は、鳥さんのもの。そう思って、手に届く限りをあり
がたく頂きます。でもこの日は、道の上いっぱいに張り出すように、房のついた
りっぱな蔓を発見。

鳥さんには多すぎるよ、きっと!そう判断して、車の屋根に上って頂いてしまい
ました。(それでも採りきれませんでした!)

夢中で山ブドウを採りながら、ふと顔を上げると、かわいらしいコクワ(サルナ
シ)の実がなんと目の前に!自分の力で発見したのは初めてで、息子と二人、歓
声をあげました。

今年は特にコクワの成りが悪いと聞いていたので、喜びもひとしお。大事に頂き
ます。コクワの実というのは、外見こそつるんとして小さいけれど、中身はキウ
イそっくりなんですよ!

そんなこんな、山ブドウは袋いっぱいの収穫。ニコニコ顔で戻ります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■冬を告げるさまざまな声
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採ってきた山ブドウの実は、一粒一粒、房から外します。息子も指の先を濃赤に
染めながら、房外し。時々つまみぐいしながら。

▼小さな手で、小さな粒を外していきます  

外した実は軽く水洗いします。ここでよーく洗ってはいけません。ブドウについ
ている酵母菌が流されてしまわないよう、優しく優しく。

水を切って大鍋に移して、手でよくつぶします。ぷちんぷちんと、手にあたる山
ブドウの感触が気持ちいいのです。つぶした山ブドウに三温塘を混ぜ、常温にお
いておくと、やがて発酵が始まります。

ぷつ…ぷつ…ぷく…山ブドウの「声」を聞きながら、発酵の具合を確かめ、搾っ
たり、漉したりして、ビネガー作りは数週間かけて進行していくのです。

泊りがけで出かけるときは、クーラーボックスに入れて連れていったりもします。

こんな風に出来上がった山ブドウビネガーは、手前味噌ながらバルサミコもまっ
さお!と密かに思っている逸品です。

クレソンサラダにかけるにんにくドレッシングに入れたり、トマトと鶏の煮込み
にたっぷり加えたり、カレーに入れたり、魚や野菜のマリネにもいいし、何かと
重宝。一年間たっぷり使います。

山ブドウビネガーが完成すると、平地に初雪が降っています。まもなく大地は再
び白い季節を迎えるのです。今年初めてのマイナス10℃もやってきました。

夜になると聞こえる、悲鳴にも似た鹿の鳴き声が、薪のはぜる音、やかんのしゅ
ーしゅー噴く音とあいまって、静かに初冬を実感させてくれます。

そうだ、冬を告げるパンケーキをそろそろ焼かなくっちゃ。
ぷつぷつ…ジュワー…
薪のはぜる音を聞きながら焼く、バターたっぷりのパンケーキは、我が家の冬の
食べ物です。出来たばっかりのすもものジャムをたっぷり乗せて、明日の朝ご飯
は決まりです。
========================================================================
◆釧路川カヌーツーリング[Voice of Wind]
  http://city.hokkai.or.jp/~kinase/
釧路川のカヌーツーリングは、夏季プログラムの全てを終了いたしました。
12月末頃からは、積雪を待って冬のツアーが始まります。
スノーシューやスキーを履いて、雪降る森の静けさに会いに出かけます。

                                                 text by 木名瀬さなえ 
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
 ◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
●凛とした冬には、すがすがしい「青」が似合う
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前回お便りさせて頂いた時は、まだ秋の終わり頃でしたが、季節はあっという間
に冬へと移ろい、年号も2004年になってしまいました。
新しい年も、どうか世界に善い時間が流れますようにと祈りつつ、また今年もお
便りさせて頂きたいと思います。

北の大地は今、冬の真っ只中。
「冬」を色で表すとすれば、私はやっぱり「青」が一番ぴったりだと思います。

どこまでも透明で澄みわたった蒼空。
雪を掘った時の不思議なアイスブルー。
そして摩周湖の深い濃紺。

冬の弟子屈(てしかが)は厳しい環境です。日によって、そして時間によって、
激しく気温が変化します。

朝方、氷点下25℃まで冷え込んだと思えば、日中は+5℃、そして暖かい室内に
入れば、+20℃前後と、外気温と内気温の差は多い時で40℃を超えてしまうこと
もあります。

もし夏にこれだけの気温差が生じたら…。

日中は+30℃の猛暑で汗をだくだくかいて、夜には0℃まで冷えこむ…。何だか
すぐに風邪を引いてしまいそうですね。でも冬は何故か平気なんです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●「寒さ」も「美しさ」に変わる
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こんな厳しい環境だけに、またその美しさも、とびっきりです。夏には水をたた
える湖も、冬には凍って上を歩くことができます。

うんと冷えた朝には、木々が真っ白になる「霧氷」や、空気中の水分が凍って降
ってくる「ダイヤモンドダスト」が見られます。
笹に覆われたヤブの斜面も、どこまでも続く白い雪原となって、上を歩く私たち
の足元で眠っているかのようです。

そして美しい冬の夜。

澄みわたった空気に満点の星空。吸い込まれてしまいそうな程の星の数です。冷
えた日は、息子と外へ出てみます。

夜の空へ向かって「ふ〜っ」と息を吐き出す…そこへライトの光を当てると、白
い煙のように立ち上る息の湯気がまたたく間に凍って、キラキラと氷の粒になり
ながら降ってくるのが見えます。

ふ〜っふ〜っ…息子は寒さも忘れて、髪の毛が凍っているのにも気がつかず、夢
中になって息を吐き続けていました。

この冬、私たちはそんな北の大地の冬の山・湖・森をご案内する、小さな旅のガ
イドをしています。スノーシュー(かんじき)や小さなスキー、山や森を歩く道
具たちが大活躍です。
▼雪に包まれた森を歩く、ツアーの様子

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●猛吹雪がやってきた!
------------------------------------------------------------------------
もともと雪の少ない道東地方なのですが、今年のこの雪の多さといったらどうで
しょう!

1月の中旬、私達の住む弟子屈町は、猛烈な吹雪に見舞われました。冬には必ず
訪れる吹雪ですが、今回の吹雪はその中でも最大級。ごーごーとうなり声をあげ
ながら襲いかかってきた、この白い竜は、4日間にわたって暴れ続けました。

原野の中の我が家は、風の通り道に建っているので、吹雪のときは、数メートル
先も見えぬ真っ白な世界になります。

窓の外は、本当に白一色。風速は、30mを軽く超え、時には40mもの突風になりま
す。目を開けていることも出来ない、荒々しい世界。

▼吹雪の中で撮影した貴重な一枚。この巨大な雪山の向こう側が玄関です

我が家と国道とを結ぶ、400mの細い道路は、全て背丈ほどの高さの雪で埋めつく
され、吹雪の続いた4日間、完全なる陸の孤島と化していました。

そんな陸の孤島状態にも、停電にも、不安を感じるのは大人だけ!
子どもにとってはなんだかワクワクするような楽しい時間だったようです。
保育園にも行けない、ふいのお休み。初めての水彩画に取り組み、一心不乱に筆
を握っていました。

非常事態の中にあっても、いつもと変わらぬ能天気な息子の姿を見ていると、こ
ちらもなんだかふぅ〜っと力が抜けてきます。


そして、電源不要の薪ストーブの暖かさや、地下から湧き出る力強い水の頼もし
さを、改めて実感します。それと同時に、原野で暮らすことの意味も考えます。

もしもこんな状況で急病人が出たら、と思うと少し怖くなってしまうのも事実で
すが、吹雪の中で救急車が来るはずありません。それが原野で暮らすことなので
す。いつでも誰かに助けてもらいたいのであれば、街に住むのが一番です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●雪の恵みを思う存分楽しんで
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さてさて、やっと雪がやんだ!吹雪が始まってから4日目の朝です。

▼重装備の父と子。後ろの窓から脱出して、これから雪かきをするのです

    
玄関は開かないので、窓から外へ出てみると、外の景色は一変。玄関前には「マ
ッターホルン」、庭には「アルプス山脈」、そこかしこに巨大な雪の山が出来て
いました。

それを見た息子は、「うわぁ〜、やったー!」
労せずして「ソリ山」を手に入れて満面の笑み。大除雪大会が終わった後は、み
んなでソリ滑りを楽しみました。

▼こんなリッパなソリ山が!ここは、もともと「真っ平ら」な場所、吹き溜りの
 雪が、高さ4mにも成長したのです
    

    
子どもって、雪が大好きですね。もちろん、我が家の息子にとっても、冬は格別。

このあたりの雪は、さらさらのパウダーなので、雪玉や雪だるまを作るのには不
向きなのですが、バケツや空き容器につめてケーキを作ったり、ソリで遊んだり、
スキーを履いてみたり、尻滑りをしたり、はたまた雪の上に点々とついたウサギ
や鹿の足跡を探検したり…。

思いも寄らぬ大雪に驚きもしたけれど、子どもにとっては、またとない天からの
プレゼント…なのかなぁ。春になったら消えてしまうプレゼントだから、それま
でに思う存分遊んでおかなければ。

でも、もう大雪は結構。
どうか心穏やかにお願いします、と天に向かって祈る日々です。

▼雪と風の芸術。なんだか美味しそう!

    
晴れ上がった先週の日曜日、家の前の雪原を横切って、息子と二人、小さな散歩
を楽しみました。湧き水の沢まで歩いていくと、水の中にはクレソンの小さな新
芽がびっしり。

ねこやなぎも少し膨らみ始めているようでした。
遠く感じる春も、一歩ずつ近づいてきています。
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◆屈斜路ガイドステーションわっか 【Voice of Wind】
 http://wakka.biz
 冬のとびっきりの風景に出かけるスノープログラムを開催しています。
 スノーシュー(かんじき)を使った森の散歩や、スキーシューという
 短くて歩き易い小さなスキーで出かけるプログラムなどなど。
 凍った湖や静かな森、夏とは違った風景を旅しています。

※Voice of Windは屈斜路ガイドステーション『わっか』に社名変更いたします。
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                                                 text by 木名瀬さなえ 
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ

北海道・釧路川のほとりに暮らしながら、カヌーのガイドをしている「Voice of Wind」の木名瀬一家。大自然と向き合いながら、北の大地でのシンプルライフ、その中での子育ては、私たちにも、また新しい視点を教えてくれそう。さわやかな川風を感じさせてくれるお話が届きます。
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
●ここはやっと春…慌ただしい毎日です
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春です。
あれほどたくさんあった雪が、こうもきれいさっぱり無くなってしまうとは、毎
年のことながら、太陽の力には本当に驚きます。

桜前線のゴールに位置するここ、弟子屈の町は、5月下旬の今が桜の満開時期。
それと時を同じくして、タンポポ・ツツジ・エゾエンゴサク・エンレイソウ…色
とりどりの花が大地を彩っています。
▼エゾエンゴサクの花。あっちにも、こっちにも。
実は、今まであんまり花に興味のなかった私ですが、花や草に詳しい人に、庭の
花の名前をいろいろと教えてもらい、急に今まで見過ごして来た、たくさんの花
たちに気が付くようになってきました。

息子も同じで、今では二人で歩くと、これはオオヤマハコベだ、これはエゾクサ
イチゴだ、と花の話をする時間が増えました。

名前を知る、たったそれだけのことで、こんなにも小さな花に親近感を抱くとは、
今まで知らずにもったいないことをしたなと、つくづく思います。

ガイドの仕事をしているフィールドにも、実は本州では高山でしか見られない貴
重な花がたくさん咲いています。ちょうど今が花盛り!鶴が舞っているような、
かわいらしいマイヅルソウ、珍しいクロユリやツバメオモト、コミヤマカタバミ、
エンレイソウ…。

北の大地の花はどれも慎ましやかですが、厳しい冬を乗り切ったことを、少しも
自慢することなく、そっと花開く。そんな姿が、私は好きです。

そしてこの春、ここへ越してきてから初めて、家の庭にタンチョウヅルがやって
来ました。やはりその迫力には圧倒!

年々、湿原のタンチョウが北上し、数もどんどん増え続けていますから、住むと
ころ、巣を作るところが少なくなってきているのでしょうか…。

いろいろ考えると喜べないのかもしれませんが、庭でゆっくりと歩いているタン
チョウを見た時は、やったー!と思わず飛び上がってしまいました。悠然として
いるのは、つがいではなく一羽だけの「独身」タンチョウだったからかもしれま
せん。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●春の明暗…生まれ、生きていくことの厳しさ
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この時期になると聞こえてくる面白い鳥の声が2つ。

ひとつは、「ジョッピン鳥」と地元の人に親しまれている「エゾセンニュウ」。
この鳥は、「ジョッピンかけたか?」と鳴くのが面白いのですが(ジョッピンは
北海道では「鍵」のこと)、ある時、ツアーのゲストが「どうもこの鳥は、『借
金返したか』と鳴くようだ」と言ったことから、我が家ではすっかり「借金鳥」
という名前が定着してしまいました。

もうひとつは、「オオジシギ」。
「ズィープズィープ」と大声で鳴いた後、ものすごい羽音を響かせながら、バサ
バサバサッと急降下して、虫を捕らえているのです。

先日も、ひとりであちこち歩き回っていた息子が、「ミチトめがけてバサバサ降
りてきた。お腹が見えて怖かった」と言っていました。

「きっと獲物だと思ったんじゃない?」とからかうとプンスカ怒っていましたが、
本当にすぐ近くまで降りてくることがあり、なかなかの迫力です。我が家での通
称は、「バサバサ鳥」です。

このオオジシギ、鳥の図鑑などを見ても卵の写真などはないのですが、この春、
我が家のすぐそばに巣を作り、卵を産んだのです。巣が地面(草むら)にあるの
で、観察は容易です。みんなで興味津々見守っています。

    
▼オオジシギの巣。ほら、小さな命が4つ。
しかし!昨日のことです。散歩に出た息子が、巣からだいぶ離れた木のそばで、
割られて中身のなくなった卵を発見し、「たいへん!たいへん!」と言いながら
持って帰って来ました。

あっ…とあわてて巣を見に行くと、やはり…もぬけの殻。卵には誰かにつつかれ
たらしい穴も空いていて、悲しい結末を迎えてしまいました。オオジシギの巣か
ら10メートルも離れていないところに住んでいる、「いたずら3兄弟ガラス」の
仕業でしょう。

生きるのには、誰もが必死です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●「ぶにゅぶにゅ」とオタマジャクシとたわむれて…
------------------------------------------------------------------------
生き物といえば、庭の池ではグワグワグワと、カエルたちが大騒ぎを始めていま
す。一体どのくらいの数なのでしょう…ちょっと分かりませんが、数百匹はいる
ように思います。

池といっても、地下から噴出する井戸の水をそのまま流している、湿地の延長の
ような池です。浅いので、息子ひとりで遊んでいても安心です。

この池で、この時期、カエルの卵取りに精を出すのが息子の愉しみとなっていま
す。本州のカエルの卵と違って、イクラのようにひとつひとつバラバラのものが、
塊となって池にあるのです(らしい)。両手にたっぷり持ってきては、私を驚か
せてくれます。

そして、お決まりのように「飼う!」…そうですか。どうぞ、お好きに。

保育園でも、オタマジャクシの飼育をしているせいか、オタマジャクシやカエル
について仕入れたネタをいろいろ披露してくれる息子です。

「卵から孵った(かえった)ばかりのオタマジャクシは死んでるみたいに動かな
いんだよ」「手は、お腹の中で出来上がってから『ぶわっ』って出てくるんだよ。
足はその後」…ふんふん、ふむふむ。

個人的には、特に飼いたいとは思わないカエルですが、こんな経験はやっぱり子
どもに必要ですよね。

図鑑を見て、カエルの種類をたくさん言えるのも、すごいことなのかもしれませ
んが、カエルや卵やオタマジャクシを、自分で捕まえていっぱい触るのも、もっ
と面白いし、すごいぞ!そう心の中で思っています。

最近、犯罪の低年齢化が深刻になっていますが、子どもたちにはバーチャルでは
ない本物にたくさん触れて育って欲しいと、強く願っています。
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◆屈斜路ガイドステーションわっか 【Voice of Wind】
 http://wakka.biz
この4月から、丸8年続けて来た"Voice of Wind"という屋号を変えることになり
ました。新しい屋号は、「わっか」と言います。北の大地に昔から住んでいたア
イヌの人達の言葉で、「水」の意味です。フィールドと人とをつなぐ「輪っか」
になれればという願いをこめて、この名前をつけました。

今年から、船底が透明なボートで川を下る、日本初のツアーを始めます。釧路川
の清冽な流れを、ちゃぷりちゃぷりと下ります。
▼小さな子どもたちにも大人気のボートです
 
                                                 text by 木名瀬さなえ 
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▼Back Number

◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです

◆秋のごちそうをいただきます

◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました

◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です

◆新緑の恵みを楽しんでいます

◆川のほとりで暮らしています

 

釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
◆豚さんを飼ってみました その1
◆手作りの「ワラの家」が完成しました
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
◆秋のごちそうをいただきます
◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました
◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
◆新緑の恵みを楽しんでいます
◆川のほとりで暮らしています
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ

北海道・釧路川のほとりに暮らしながら、カヌーのガイドをしている「Voice of Wind」の木名瀬一家。大自然と向き合いながら、北の大地でのシンプルライフ、その中での子育ては、私たちにも、また新しい視点を教えてくれそう。さわやかな川風を感じさせてくれるお話が届きます。
◆手作りの「ワラの家」が完成しました
●夏は暑しと言うけれど?
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夏本番!ですが、ここ釧路川のほとりは寒かったり暑かったり…。まだまだフリ
ースも現役です。息子も、朝起きると長袖を着るか、半袖を着るかで、たんすの
前でしばし悩んでいます。

とはいえ、やはり夏。咲き始めたばかりのジャガイモの花が、あっちでもこっち
でも風に揺れています。その昔、マリーアントワネットがこよなく愛したこの美
しい花、私も大好きです。

花が咲き、観光客が増えるにつれ、だんだん、だんだんと忙しくなってきました。
ドタバタと過ごすのが、私の夏です。

そのドタバタに拍車をかけていたのが、引越作業です。今までコツコツと作って
きた「ワラの家」がとうとう完成したのです!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●ワラの家って、どんな家??
------------------------------------------------------------------------
ワラの家…と聞くと、誰もが連想する「3匹の子豚」のお話。なんだか吹けば飛
びそうなイメージです。ところが、そんな「藁」のイメージとはまるで違う『ワ
ラの家』に、初めて出会ったのは2001年の秋でした。神奈川の山奥で、「パーマ
カルチャーセンター」なるものを開いている、夫の古い友人に教えてもらったこ
とがきっかけです。

聞けば、「ワラ」で作ったブロックを、レンガの家のレンガよろしく積み重ねて、
まわりを漆喰で固めた強固な家、とのこと。北海道にはワラもたくさんあるし、
断熱性に優れ、自然素材で、何よりお金がかからない!我々にうってつけではあ
りませんか。

ちょうど、事務所や集合スペースになる自宅を兼ねた建物を建てようと、いろい
ろ構想を練っていた時期でもあり、それまでのプランはきれいさっぱりと忘れて、
私たちはワラの家作りに取り掛かりました。

もともと、アメリカやメキシコなどの、木のない地域において開拓民が作ってい
たワラの家。ワラ(ストロー)のブロック(ベイル)を積み重ねて作った家だか
ら、ストローベイルハウスと呼ばれています。

てっきり私たちが日本一番乗り、と思っていたら、日本にも「ストローベイルハ
ウス協会」というのがあるということもわかりました。
(日本ストローベイルハウス協会)

土地は、今の自宅の隣。元は軽飛行機の滑走路だったという、細長い6,000坪の
草地です。ここに建っていた50坪の倉庫を改造して、ワラの家に作り変えること
に決めました。

何しろ、低予算ですから全て手作りです。お金がないのに、時間も無いときたも
んだ。おまけに冬の工事は極寒。有り体に言えば、難工事そのものです。

雨に濡れて馬が食べなくなった牧草ワラのブロックをもらってきて、一つ一つ縛
り直し、それを積み上げる。

壁がまだ無かった頃には、冬の吹雪で中が埋まってしまったこともありました。
そんな時は、息子もソリとスコップ片手に、雪かきを手伝ってくれたものです。
拾って来たガラスで手作りしていた建具が、極寒の中で次々割れたこともありま
す。

間仕切りの壁を作り、窓をはめ、ワラに漆喰を塗り、水回りを整え、コツコツ、
コツコツと… 

細かく書いていけば、きりはないのですが、とにかく工事を続けること2年、ど
うやらこうやら住めるような状態になったのです。

ワラって、ごくごくつまらないものの代表のように思いませんか?でも本当は、
すごいパワーを持っているんです。ワラの家作りをしてみて、改めてそう思いま
した。


▼これがワラの家です(入り口&外観)
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●これが意外と快適なんです!
------------------------------------------------------------------------
建物の中に入ってみると、ワラ壁の存在感に圧倒されます。現在ある建築物のほ
とんどが、まっすぐ・平面な壁なのに対して、ワラの壁はカーブして、デコボコ
して、コテ跡や指の跡がたくさん。曲線が暖かみを生みだしている、ような気が
します。


 ▼食堂部分。床はコンパネ、
  テーブルは電気屋さんにもらったコードリールを改造

    実際、このワラ壁は、厚さが50センチ以上もあり、断熱性は抜群です。外の気温 がぐんぐん上がって、半袖で過ごせるような陽気になっても、ワラの家はそう簡 単には気温があがりません。中に入るとひんやりとしていて、フリースのジャン バーを着ることもあります。だからきっと、冬は外が猛烈に寒くても、中は暖か …なはずです。 しかし「完成」と言っても、ツアーで立ち寄って下さったゲストの方にも、「い つ完成するんですか?」と聞かれてしまうほど、まだ「作りかけっぽい」感じな んです。 でも確かに、完成はないのかもしれません。いつまでも進化を続けていくのが、 手作りの家です。  ▼扉はみんな手作り、   取っ手の部分に、折れたストックを採用。ガラスは拾ったもの。
  
現在、ワラの家は土間の広い玄関・厨房・食堂と小上がり・事務所・トイレ・自
宅部分の部屋(3部屋) から構成されています。 最初のうちは、息子が「そう
こ」と呼んでいたこの建物が、今では私たちの新しいお家となりました。
 ▼入り口を入ったところは土間です
   まだ建物の周りはがらん…としていますが、これから畑を作って、池を作って、 そのうちお風呂も作りたいね、といろいろ考えると楽しくなってきます。 便利な都会のスピードとは違う、忙しくても、どこかゆっくりした時間が、ここ には流れています。 そうそう、ワラのパワーについては『わら一本の革命』(福岡正信著・春秋社) という本にも書いてあります。自然農法の話で、ワラの家については書いていま せんが、「藁」ってすごいと心から思います。機会があったら読んでみて下さい ね。 ======================================================================== ◆屈斜路ガイドステーションわっか 【Voice of Wind】  http://wakka.biz 水の気持ちいい季節です。先日は、今年から始めた「透明ボートでの川下り」に、 息子の同級生21人を招待して、みんなで川下りを楽しみました。地元にいながら なかなか足を踏み入れることのない水の上で、子ども達の歓声が川面にこだまし ていました。家族連れにも大人気のプログラムです。 ▼小さな子どもたちにも大人気のボートです    text by 木名瀬さなえ  ----------------------------------------------------------------------○
▼Back Number

◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました

◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです

◆秋のごちそうをいただきます

◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました

◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です

◆新緑の恵みを楽しんでいます

◆川のほとりで暮らしています

 

釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
◆豚さんを飼ってみました その1
◆手作りの「ワラの家」が完成しました
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
◆秋のごちそうをいただきます
◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました
◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
◆新緑の恵みを楽しんでいます
◆川のほとりで暮らしています
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釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ

北海道・釧路川のほとりに暮らしながら、カヌーのガイドをしている「Voice of Wind」の木名瀬一家。大自然と向き合いながら、北の大地でのシンプルライフ、その中での子育ては、私たちにも、また新しい視点を教えてくれそう。さわやかな川風を感じさせてくれるお話が届きます。

◆豚さんを飼ってみました その1

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●自分で育てた豚をいただいています
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冬まっさかりの北国。このところ、厳しい冷え込みが続いています。

−20℃以下、先週には−28℃にまで冷え込み、こんな日の朝は「しばれる」とい
う北海道弁がぴったり!ぴりぴりと刺すような冷気に、心も引き締まります。

厳しい冬ですが、前回のメルマガでご紹介した「ワラの家」は思いのほか暖かく、
一度に少しの薪で足りるので大助かりです。

冬の日の、どこまでも青く澄みわたった空、キラキラ光るダイヤモンドダスト、
しばれる朝の真っ白な樹氷、冬はとにかく美しく、息子も私も、また巡ってきた
冬に大喜びです。

▼すべて真っ白、これが日常です

すべて真っ白、これが日常です


先日、我が家でモツ鍋会を開催しました。自家製の味噌で味付けした、おいしい
スープで、ごぼう・こんにゃく・ねぎなど、たっぷりの野菜に、豚のホルモンを
たくさん入れたごちそうです。

実はこの日、みんなを暖めてくれたモツ鍋に入っている豚のモツは、我が家で夏
の間に育った豚さんなのです。ぐつぐつ鍋が煮立つ音、鍋を囲んだみんなの笑顔、
命に感謝しながら、心まであったかになりました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●豚を飼ってみよう
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豚を飼い始めたのは、一昨年の春からです。北海道に引っ越してきて8年、犬も
飼ったことがないのに、いきなり豚です。

野菜は畑で作ることができる。
魚は川で釣ることができる。
でもお肉は?

そんな自分への問いから始まった、豚を飼う、ということ。

1年目は、何しろ、豚を見たこともないので、まずは豚を飼っている人にいろい
ろ聞くことから始めました。

豚の本を読んだり、養豚場へ豚を見に行ったりというところから始まり、小屋を
豚小屋に改造し、えさ箱や水入れを作り、ああでもない、こうでもないと大騒ぎ
で豚を迎えたものでした。

経済動物である豚は、生まれてから肉になるまで、わずか半年。今スーパーで並
んでいる豚肉は、ほとんど例外なく生後5〜6ヶ月の仔豚の肉です。

我が家では、初夏に生後3ヶ月くらいの仔豚を買ってきて、4ヶ月ほど飼って大き
くしてから肉にするというサイクルで豚を飼っています。(つまり、夏の間だけ
の養豚家です)1年目に飼った豚も、その年の冬の始まり頃、肉にしてみんなで
頂きました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●豚飼育 2年目の挑戦
------------------------------------------------------------------------
1年目にちゃんと豚を大きくすることが出来たので、ちょっぴり自信のついた2
年目。1年目と同じように7月の初め頃、隣町の養豚場まで出向いて仔豚を買って
きました。

「木名瀬家用」の印のついた生後3ヶ月のぶーぶー鳴く仔豚を2頭。ツアーに使っ
ている大きなワゴン車に2頭を積んで戻ってきます。

ようこそ、豚さん!豚の来た日は、スタッフ含めみんなで何度も豚小屋へ通って
しまいます。

▼背中の緑印は、「木名瀬家行き」の目印。数日経つと消えてしまいます

背中の緑印は、「木名瀬家行き」の目印

生後3ヶ月くらいですから、柴犬の成犬くらいの大きさにはなっているのですが、
やっぱりかわいいもの。しかし、これから大きくして食べてしまう豚ですから、
名前はつけません。

牛などに比べると、割と手間いらずの豚飼育ですが、やはり朝夕のエサやりと豚
舎掃除は欠かせません。

エサは「野菜くず」や「残飯」の他に、毎朝お豆腐やさんへ行き、「おから」を
もらってきます。たまに、揚げすぎた「がんもどき」とか、賞味期限の切れた「
油揚げ」もついてきます。

製麺やさんにも声をかけ、賞味期限の切れた返品の「ゆでうどん」ももらえるよ
うになりました。保育園や地域、さまざまな縁に助けられ、いろいろな人に支え
られての養豚です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●養豚初心者に一大事発生!
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我が家にやってきた仔豚達も、しっぽの垂れている1頭の食がちょっと細いのが
気がかりでしたが、順調に育っている…ように見えました。

しかし、我が家にきて10日目、大事件が起こりました。

食の細かった方の1頭が、具合悪そうにふらふらして、吐いているのです。どう
したんだろう!?

何しろ、「にわか養豚家」ですから、不測の事態にどう対処したらいいのか、パ
ニックです。とにかく心を落ち着け、仔豚を買った養豚場へ電話して指示を仰ぎ
ます。

薬を与え、がんばれがんばれ、と仔豚を励まします。大きくなってきた仔豚がち
ょっとこわい息子も、この時は一生懸命に豚を励ましていました。みんなで暗く
なるまで声をかけたり、身体をさすったり….

翌朝、息子と一緒にえさを持って豚小屋へ。先に走っていった息子が叫びました。
「あーっ死んでる」慌てて小屋を覗くと、もう動かなくなって倒れている豚さん
の姿が目に飛び込んできました。

わぁーわぁーと大泣きの息子をなぐさめながら、私も泣きたい気持ちです。「ど
うせ」食べてしまう豚なのですが、やっぱり苦しんで死んでいった小さな命は、
かわいそうの一言です。この日はみんなでお墓を作り、仔豚を埋葬しました。次
はもっと元気に生まれておいで。

我が家の豚は1頭になってしまいました。しかし豚は仲間といるのを好む動物で
す。残された1頭はずいぶんと寂しそうに見えます。ちょっと悩みましたが、や
はりもう1頭、豚をもらってくることに決めました。

我が家の豚はまた2頭になりました。初めて会った2頭の豚は仲良くできるでしょ
うか。そして、秋まで順調に育ってくれるのでしょうか。(続く)
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屈斜路ガイドステーションわっかの、冬のプログラムは、小さくて短いスキーを
使ったツアーや、動物たちの足跡を探す森のツアーもあります。

冬の北海道はとびっきりの美しさ。寒さや雪に触れるのも、またいい経験ですよ。
屈斜路ガイドステーションわっか http://wakka.biz 

                         text by 木名瀬さなえ
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◆手作りの「ワラの家」が完成しました
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
◆秋のごちそうをいただきます
◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました
◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
◆新緑の恵みを楽しんでいます
◆川のほとりで暮らしています

 

釧路川リバーガイド一家のシンプルライフ
◆豚さんを飼ってみました その1
◆手作りの「ワラの家」が完成しました
◆日本で一番遅い春、ようやくやってきました
◆雪と氷と吹雪…冬の原野の暮らしです
◆秋のごちそうをいただきます
◆北の果て、天塩川(てしおがわ)をゆっくり旅してきました
◆ただ今、カヌーシーズン真っ只中です
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